「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、読者から山口氏に寄せられた人生相談に対する回答を掲載します。(構成:小川晶子)

<質問>
人生後半のキャリア選択で、人生の主導権を握るには?(40代・男性)
49歳、就職氷河期世代です。会社員としての延長線上で人生を終えたくないと強く感じ、個人の事業で生きていく決断をしました。まずは副業としてスタートし、将来的にはそちらに軸足を移すつもりです。そのために副業が可能な職場に転職しようと考えていますが、会社の価値観や働き方に自分の価値観がすり減らされないか不安です。こうした人生後半のキャリア選択において、副業可能な仕事を選ぶ際に何に気を付けるべきか、また、どんな視点で会社や組織を見れば自分の核を守っていけるか、ご意見を頂ければ幸いです。
<山口周氏の回答>
副業を許可してもらうよう交渉しよう
「副業が可能な職場に転職する」とのことですが、今は役所に勤めているということでしょうか?
そもそも日本の法律では、民間企業は基本的に副業を禁止することはできません。「職業選択の自由」が憲法で定められており、本業の時間以外に副業をすることは個人の自由なのです。就業規則に「副業禁止」とあるのなら、それは憲法違反の可能性が高いです。裁判になれば会社側が負けるでしょう。
(※公務員の場合は国家公務員法、地方公務員法で副業が禁止されていますが、近年は一部に認める動きもあります)
ですから、今の職場で副業を許可してもらうよう交渉してください。そういうことは軋轢を生むからやりたくないというのであれば、どこの会社に行っても自分の生き方は貫けません。
自分の価値観が会社にすり減らされないか不安になる前に、自分の価値観や働き方を追求する努力をしていますか?ということです。何の努力もしないのに、周りが勝手にあなたの価値観を尊重してくれる職場なんて一つもありません。
会社はあなたの人生のリソース
あなたは自分の人生の経営者です。「就職氷河期が悪い」「会社が○○してくれない」という他責的な考え方をしないで、自分らしい生き方を自分でつかみとるんだと考えてください。
僕自身は「会社を使い倒す」と考えていました。
会社と自分の主従関係を考えると、「会社の中に自分がいる」パターンの円を描く人がいますが、真逆です。自分の円の中に、リソースの一つとして会社があるのです。
会社にとっては「ヒト、モノ、カネ」が資源であり、「人的資本」はリソースの一つと言われます。でも個人にとってみれば会社はリソースなんです。安定的な給料、一定の社会的信用、さまざまな経験が得られるほか、ローンを組むときに有利だったりしますね。
僕が明確に意識していたのは、将来、自分の物書きとしてもバリューを上げてくれるような職場にいようということです。
皆さんも、会社に使われる立場ではなく、人生の経営者です。もっと自分を真ん中に置いて、周囲を活用するという考え方でいたほうがいいと思います。
(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)