劣等感は“のび太くん”と同じ。あなたの魅力を引き出す最高のスパイスだった
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、『精神科医Tomyが教える 40代を後悔せず生きる言葉』(ダイヤモンド社)など、累計33万部を突破した人気シリーズの原点、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)です。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。
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劣等感との新しい付き合い方
今日は「劣等感との付き合い方」というテーマについて、いつもとは少し違う角度からお話ししたいと思います。
劣等感を抱えていて、それを何とかしたいと思っている方はたくさんいらっしゃるでしょう。しかし、私はこう思うのです。劣等感がまったくない人間は、果たして魅力的でしょうか。
劣等感は、あなたの魅力を引き出すスパイスです
劣等感が一つや二つ、あるいはたくさんあったとしても、私はそのほうが人間として魅力的だと考えます。
例えば、人気アニメの登場人物を思い浮かべてみてください。何でも完璧にこなす優等生よりも、のび太くんのように欠点が多かったり、ジャイアンのように乱暴な一面の裏に優しさを抱えていたりするキャラクターのほうが、どこか人間味があって惹かれないでしょうか。
一見、鼻につくお金持ちのキャラクターでさえ、その背景には様々な葛藤があるように見えます。主人公のドラえもんだって、もともとはポンコツな猫型ロボットだからこそ、あれほどの魅力があるのです。
私自身も、いろんなコンプレックスを抱えています。例えば、普通の家庭を築いて親孝行ができたら、と想像した時期もありました。しかし、それは必ずしも解決しなければならない問題ではありません。無理に自信を持つ必要もないのです。むしろ、そのような劣等感を抱えているからこそ、自分に「味」が出るのだと考えています。
無理に欠点をなくす必要はありません
容姿についても同じことが言えます。私は自分の頬骨や顎のラインが少し気になっていますが、これを整形手術で直したいかと聞かれれば、答えは「いいえ」です。
仮に顔の形をきれいに整えたとしても、それによって劣等感が完全になくなるとは思えません。この顔は、他の誰でもない自分自身の一部です。例えば、私が自分の顔を「ジャガイモのようだ」と思っていたとして、そのデコボコを削ってきれいな球体にしたいかと言われれば、決してそうは思いません。
これは、盆栽の美学に近いかもしれません。盆栽は、左右対称にきれいに整えることだけが美しいとされるわけではありません。いびつさやアンバランスさの中にこそ、趣が生まれるのです。
不完全さを愛でる「わびさび」の心
このように、整っていないものや不完全なものを美しいと感じる心は、日本の伝統的な「わびさび」の精神に通じるものがあります。
通常、「さび」と聞けば取り除きたくなるものですが、日本ではそれを「趣がある」と捉えます。庭園に生えた「苔(こけ)」も同様です。きれいに取り払うのではなく、苔の生え方やその陰影の美しさを楽しむ文化があります。
日本庭園は、ピカピカに磨き上げられた工業製品とは異なり、落ち葉が少しあるくらいのありのままの姿や、左右非対称の構図の中に奥行きや風情を見出すのです。
自分の劣等感に対しても、このような発想を持つことが大切ではないでしょうか。
悩む姿そのものが、あなたの輝きになります
劣等感は、持ったままでいいのです。時にはそのせいで悩み、嫌な気分になることもあるでしょう。しかし、人間は強く、その悩みやコンプレックスを抱えながらも「どう乗り越えようか」「これはこれで仕方ないか」と考えることができます。
まさに、そうやって悩み、考えるその瞬間に、その人の人間的な魅力が生まれるのです。劣等感に深く悩んでいる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、私はそうやって真剣に悩んでいる姿こそ、とても素敵だと思います。
劣等感は、いくつあっても構いません。たくさんあっても、それがあなたの価値を否定するものではないのです。その事実を理解し、ありのままの自分を受け入れて生きていく。人間だからこそ、それで良いのではないでしょうか。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。








