ものすごく単純化していえば、他人の手柄を横取りするのは「仕事ができない人」、自分の手柄を他人に譲ることができる人は「仕事ができる人」と判断してかまわないと思われます。

 明らかに自分のお手柄にしてもかまわないケースでも、仕事ができる人は、手柄を独り占めするようなことはしません。

「私が今回の契約をうまくまとめることができたのは、部長のおかげです」
「私一人が頑張ったわけではありません、チームのみんなの力です」

 このような感じで手柄をどんどん他の人に譲ってしまうのです。

 ノーザン・イリノイ大学のステファニー・ヘナガンは、4つの会社で働く不動産販売員を対象に、社内賞をとるような優秀な販売員についての研究を行いました。

 すると、優秀な販売員ほど謙虚で、手柄を独占するようなことはしていませんでした。なぜそうするのかというと、優秀な人ほど同僚たちからの妬みや怒りなどを持たれやすいので、それを避けるためであろうとヘナガンは分析しています。

 仕事ができる人は、ともすると周囲に妬まれ、足を引っ張られますから、できるだけ謙虚な姿勢を見せていたほうがよいのです。仕事ができる人は、そういう気配りを自然に行いますので、周囲に敵を作ることもなく成果をあげることができるのだろうと考えられます。

トップが謙虚だと
業績も伸びる

 「せっかく自分が汗水たらして手に入れた業績を、他の人に譲るのはどうしても納得できない」と感じる人がいるかもしれませんが、いささか心が狭いと言わざるを得ません。

 他の人に手柄を譲っても、だれの成果なのかは周囲の人たちもみなわかっています。「これは私の手柄だ!」などと自分で吹聴してまわらなくとも、周囲の人たちはしっかり理解していますから、それでよしとしましょう。

「部長は、まるで自分の手柄であるかのように言っているけど、本当の功労者は○○さんだよね」と周囲の人たちもわかってくれているものです。