
筆者は、吉本でお笑いコンビ「オオカミ少年」で活動する傍ら、探偵事務所の代表を務めています。私の探偵歴十数年の中でさまざまな調査の相談を受けました。今回ご紹介するのは、巧妙に嘘を重ね、依頼者を欺こうとしたビジネスパートナーの正体を暴いた、緊迫の尾行調査の案件です。(探偵芸人 オオカミ少年・片岡正徳、登場人物はすべて仮名)
若き実業家からの依頼
ビジネスパートナーに不審な点
片岡探偵事務所のドアを叩いたのは、若き実業家、辻岡大(つじおかだい・28歳)さんでした。
辻岡さんの顔には、ビジネスマンとしての鋭い眼光の奥に、拭い切れない不安と疲労の色が深く刻まれていました。テーブルの上で指を組み切実な口調で語り始めました。

「新しいビジネスを共同で進めている相手がいるんです。仲間諭(なかまさとし・44歳)さんは、非常に魅力的なプレゼンをする方で、私も最初は彼のビジネスセンスに魅力を感じました。しかし、話が進むにつれて、どうも腑に落ちない点が増えてきたんです」
辻岡さんの話は、仲間氏の不可解な言動に集中していました。
「最初に聞いた現住所と、数週間後に彼が何気なく口にした現住所が食い違っていたり、出資金の配分について、私に不自然なほど多くの負担を求めてきたりしたことで疑念が湧いてきました。事業計画もいくつか気になる点があるんです」
辻岡さんは、分厚い事業計画書を示しながら疑念のポイントを説明してくれましたが、守秘義務に抵触する箇所なので説明は控えます。