スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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「内省の時間」がなくなっている
――いまはスマホやネットのせいで一昔前より何かに集中することが難しくなっている感じがします。
栗木さつき氏(以下、栗木):そうですね。とくに女の子たちは、SNSのせいでつねに他人との比較を強いられているということもありますよね。ちょっとかわいそうだと思ってしまいます。
また、LINEグループやSNSのつながりで、グループの内での自分の立場を気にしたり、精神的なストレスが複雑化している状況もあるでしょう。
かつてのように、若いときにいろんな本を読んで、内省して自分を深めていく作業が、いまの若い子たちにはできにくくなっているのかなと感じます。
――昔より内省の時間がなくなっているというのはそうかもしれません。
栗木:内省を通じて自分と向き合い、内面を深める時間は、人生を豊かにするために不可欠です。でも、ショート動画などでパパッと情報を見ることに慣れてしまうと、静かに本を読むような時間に我慢できなくなってしまうのもわかります。この内省の重要性について、『一点集中術』では他者への共感能力との関連も示されています。
「みずからの感情と経験に触れれば触れるほど、ほかの人の頭にどんな考えがよぎるのかを、より正確に、より豊かに想像できるようになる」
現代社会は、思考より行動を重視すべく進化をはたしてきた。
ところが現実には、じっくりとひとりで考える時間をもつからこそ、日々の生活が有意義なものになる。
たった数分でもかまわない、あなたがネットサーフィンに興じて「忙しく」している時間を内省の時間にあてよう。――『一点集中術』より
読書しないのはもったいない
――耳が痛いです。私自身、通勤時など、スキマ時間があるたびについSNSをだらだら見てしまいます。あるいは車内でもメールの返信など仕事をしたり。内省の時間を持っているかと言われるとなんとも……。
栗木:会社員の人なら、通勤時間は読書の時間と決めてしまうのがよさそうです。少し前に、三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という本がベストセラーになりましたよね。これは、多くの人に、内省や読書のような豊かな時間を持てなくなっているという問題意識があるからかなと思います。心のどこかで、このままではまずいと考えているのかなと。
――読書ブームが起きるといいですよね。
栗木:じつは韓国ではいま、すごくきれいな図書館が増えて、紙の本が「ヒップ(おしゃれ)」だという文化が若い子の間で始まっていると聞きました。日本でもレコードがブームになっているのと同じように、アナログなものの価値が見直されてきたのかなと思っています。
――本を読むという行為は、究極の一点集中ですよね。
栗木:本にもいろんなジャンルがありますが、読書をすれば、少なくとも集中力を養うことはできます。いちばん身近な集中力養成法とも言えます。批判的思考力を鍛えるとも言われています。
『一点集中術』では、何事にもメリハリをきかせて一つひとつの行動に集中することが、仕事や人生を豊かにすると説かれています。ぜひ日常のなかで本を手に取り、集中する時間を意識的につくってみてください。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)




