ムンバイのiPhone17の広告2026年末までに米国で販売するiPhoneの大半をインドで組み立てる計画が報じられており、計画通りに行けば、アップルはインドでの生産数を年間8000万台とほぼ倍増させる模様である(写真はムンバイのiPhone17の広告) Photo:NurPhoto/gettyimages

スマートフォンの輸出台数で
インドが中国を上回る

 2025年4月、インドから米国へのスマートフォンの輸出台数が、中国からの輸出台数を単月で初めて上回るに至った。2024年時点では、中国の米国への輸出台数は、インドの約6倍と大幅な差があった。2024年11月にトランプ氏が米大統領選で当選すると、インドから米国向けのスマートフォンの輸出は急増、中国を逆転し、2025年7月時点において中国を4カ月連続で上回っている。

 中国から米国へのスマートフォン輸出が大幅に減少した背景には、米中対立の長期化を見据えたサプライチェーン再編がある。インドの輸出の急拡大の立役者は、アップルだ。同社は、2017年からインドでiPhoneの生産を開始した。公式なリリースはされていないものの、2026年末までに米国で販売するiPhoneの大半をインドで組み立てる計画が報じられており、計画通りに行けば、同社はインドでの生産数を年間8000万台とほぼ倍増させる模様である[1]。

スマートフォン輸出の急増は
政策の成功例

 中印逆転を呼び込んだ直接のトリガーは地政学的な情勢の変化であったが、そこに至るまでの政府の支援も無視できない。

 インド政府が要因として強調するのが、生産連動型インセンティブ(PLI)の導入である。2020年4月に導入されたPLIは、所定の国内投資や生産などの条件を達成した企業に対して、売上増分の4~6%の補助金を支給する仕組みである。政府は、成果として、2025年半ばまでに承認件数806件、累計投資1.76兆ルピー、雇用創出効果は間接分も含め約120万人規模に達したと報告している[2]。

[1] Reuters. “Apple Aims to Source All US iPhones in India in Pivot Away from China ? FT Reports.” April 25, 2025: https://www.reuters.com/world/china/apple-aims-source-all-us-iphones-india-pivot-away-china-ft-reports-2025-04-25/?utm_source
[2]Government of India “PLI Scheme: Powering India’s Industrial Renaissance ? A Transformational Push for Manufacturing, Employment, and Global Competitiveness”,2025/8/24:https://static.pib.gov.in/WriteReadData/specificdocs/documents/2025/aug/doc2025824619301.pdf