世界各国を巻き込む
中国の過剰生産能力問題
最近、中国の過剰生産能力問題が一段の注目を集めている。
契機となったのは、イエレン米財務長官が4月上旬に訪中した際の発言である。イエレン氏は、中国の電気自動車(EV)、リチウム電池、太陽光パネルなどの「新産業」における過剰生産能力が、世界の価格をゆがめ、米国および世界の企業や雇用に悪影響を及ぼすとして懸念を表明した。10年以上前にも、中国で過剰生産となった鉄鋼が安価で大量に輸出された結果、世界と米国の産業が打撃を受けたとして、「そのような現実は二度と受け入れない」とも発言した。
こうした米国の動きに先立って、すでに欧州委員会が2023年10月、中国から輸入されるEVについて、中国政府の補助金が市場を歪曲しEUのEV産業に悪影響を与えているとして調査を開始した。背景には、補助金が過剰生産能力を生み出し、安価な製品の輸出につながっているとの懸念がある。4月には、太陽光発電や風力発電分野においても、同様の理由で中国企業の調査を開始した。
欧米だけでなく、新興国も中国からの輸入品に対する対抗措置を取り始めている。23年9月には、インドが中国からの鉄鋼製品の輸入に5年間の反ダンピング関税措置を発動した。ベトナムは中国から輸入する風力発電塔に対して、ブラジルも金属板・鉄鋼・化学品・タイヤなどに対し、反ダンピング調査を開始するとした。
このような諸外国の指摘や措置に対し、中国側は反発している。