例えば、制度変更前には「購入価格1億円のタワーマンションが、相続税評価額ではわずか2000万円台の金額まで圧縮される」といったことも珍しくありませんでした。

 そのため、「現預金で1億円置いているのであれば、同額でタワマンを買ったほうが節税になる。だったら買う!」と考える富裕層が多かったのです。

 こうしたタワマン節税を封じるために2024年から導入されたのが、「区分所有補正率」です。

 従来の仕組みで算出された評価額に区分所有補正率を掛け合わせることで、時価との乖離を小さくしようという狙いがあります。

 区分所有補正率は、「築年数」「総階数」「所在階」「狭小率」の4要素から決まります。

 上の図からもわかるように、「築浅」「総階数が多い」「所在階が高層」「狭い」ほど補正率が上がる、つまり典型的な都心タワマンほど評価額が大幅に上がる設計になっているのです。

 ちなみに、この制度変更はタワマンに限らず、全ての区分所有マンションの相続税評価に適用されます。計算の結果、従来と評価額が変わらない、むしろ下がるというケースもありますが、全てのマンションの評価額に影響を与える仕組みです。

 先述の通り、この制度変更の狙いは、時価と相続税評価額の乖離を小さくすること。具体的にはマンションの相続税評価を「時価の6割くらいにする」ことが想定されており、これによってタワマン節税はほぼ封じられた――はずでした。

マンション価格の高騰で
節税効果は健在

 ところが、実際のデータを見ると、現状はその想定通りになっていないことがわかります。タワマン増税の影響を上回る勢いで、価格が高騰しているのです。

 都心の実例を見てみましょう。以下はタワマンではなく都心の大規模マンションですが、それでも価格の高騰ぶりは顕著です。