こんな朝ドラ見たことないっ!…岡部たかしがわら人形に釘を刺す、優秀でもダメでもない「立ち尽くす父親」で登場〈ばけばけ第1回〉『ばけばけ』第1回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第1回(2025年9月29日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

『怪談』の小泉八雲とその妻をモデルにしたドラマのはじまり

「日に日に世界が悪くなる」♪「野垂れ死ぬかもしれないね」♪

 ハンバート ハンバートの主題歌『笑ったり転んだり』は脱力系の歌詞ではじまる。

 さわやかなはずの朝にこんなワード? 朝ドラこと連続テレビ小説『ばけばけ』の第1回は、この主題歌をはじめとして面食らうことがたくさんあった。でもそれは悪い意味ではなくいい意味である。

「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」

 まさにドラマのキャッチコピーそのもの。面食らうことがいっぱい。でもすばらしい。そんな気がする第1話。

 日本の怪談を研究した小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの妻・セツをモデルに、上級武士の家に生まれながら、明治維新で没落してしまった松野トキ(高石あかり。「高」の表記は、正確には「はしごだか」)と外国人レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)の夫婦の物語。明治のはじめ、日本が急激に変わるなかで、怪談を愛するセツとヘブンの日常が描かれる。

 第1週「ブシムスメ、ウラメシ。」(演出:村橋直樹)は、トキとヘブンがすでに結婚し、仲睦まじく暮している様子からはじまり、そこから明治8年(1875年)、トキがまだ幼い時代へさかのぼる。

 冒頭、トキとヘブンが向き合っている姿を真俯瞰から捉えた画が新鮮。しかもその画面は薄暗い。夜、ろうそくの明かりだけでふたりは怪談を楽しんでいる。
 
 トキが語り、ヘブンが耳をそばだてる。怪談は『耳なし芳一』。怨霊につきまとわれている盲目の琵琶法師・芳一を救うため、和尚が彼の全身に経文を書く。ところが、書き忘れがあって……。

『耳なし芳一』はラフカディオ・ハーンこと小泉八雲が1904年に上梓した『怪談』に掲載されて広く知られるようになった。

 八雲は妻セツから日本の怪談を聞きそれを書籍化していった。

 冒頭では八雲がこんなふうにして日本の怪談を収集したことが端的にわかる。

『ばけばけ』の英語タイトルは『THE GHOST WRITER'S WIFE』でこれにはトキがゴーストライターだったという意味も込められているという。