「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
「計画的に貯金しよう!」という意思はあるのに、できない。というか、気づくと必要ないモノを買ってしまう……など。こういったお金の困りごとは、あなたが怠けているからではなく、性格のせいでもなく、もしかしたら「脳の仕組み」のせいかもしれません。
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。
発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

ADHDの人が無自覚に納めちゃってる「超ムダな税金」とは?Photo: Adobe Stock

ADHD TAXって知ってる?

 ADHD TAXという言葉を聞いたことがありますか?
 これはADHD特性由来の出費を指す海外でのスラングで、直訳するとADHD税。つまりADHDの特性が原因でかかってしまうコストのことです。

 この言葉を知った時は、「この悩みが世界共通だったんだ」という驚きと、「世界中に仲間がいるんだ」という喜びが同時に押し寄せました。

 私もADHD TAXのために1年間で100万円近く吹き飛んだことがあります。
 20代半ばのころです。自動車の任意保険の更新月。当時お金がなかったのと、ADHDお得意の先延ばしで任意保険が失効したことがありました。そのタイミングで交通事故を起こしたのです。最も事故を起こしてはいけない最悪のタイミングです。その結果、100万円以上を自腹で賠償しました。任意保険の加入を先延ばしにしていなければ防げた出費です。

 その他にもたくさんのお金を使ってきました。

「ADHD TAXがなければ、あんなことやこんなことにお金を使えたのに!」

 と思うことも多々あります。思い出すと、未だに切ない気持ちになります……。

 様々なADHD TAXを経験してきた当事者として、そしてお金の相談を受けてきたFPとして、ADHD TAXを「7つの税金」に分類しています。
 今回はその1つ、「忘却税」についてご紹介しましょう。

忘却税「気付けば課金、再発行」

 ADHDあるあるの「うっかり忘れ」による出費は、本当に税金のようにじわじわ効いてきます。私はこれを忘却税と名付けました。例えば、

・サブスクの解約忘れ
・レンタル品の返却忘れ
・出先で何度も買う充電器

 などが該当します。

 そんな忘却税の中でも一番ダメージが大きいのが、支払い忘れ。公共料金の支払い忘れで電気が止まった経験がある人もいるでしょう。
 特に税金とクレジットカードの支払い忘れは危険です。私も経験がありますが、住民税を滞納すると、預金口座や生命保険の解約返戻金が差し押さえになります。クレジットカードは信用情報に傷が付きます。新たなクレジットカードを作れなくなったり、住宅ローンが組めなくなったりすることがあるので、忘却税の中でも要注意です。

 このように、うっかり忘れによる出費、思い当たりませんか?
 私はCDレンタル全盛期の時代に、延滞に延滞を重ね、最終的にくるりのベストアルバム(多くの人に借りられてジャケットもボロボロでした……)を定価で買い取ったという苦い経験があります。これも立派な忘却税です。

 ふだんの生活をとおして、「あ! これは忘却税だ!」「もしかしてADHD税かも…」と感じることがあると思います。
 無意識に費やしていたお金や時間は、本来払わずに済むことだったかも。まずはそこに気づくことが大切です。

(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』から一部抜粋、編集したものです。)