グラノヴェダーはアメリカの転職市場における調査で、転職や新しいキャリア機会を作る上で、弱いつながりを経由した転職者のほうが、より年収がアップしたり、より上位の役職に就けたりするケースが多いことを明らかにしました。つまり、親友や、近しい家族などの紹介による縁故採用より、たまにしか会わない人や、昔の知り合いなどの紹介で転職した場合のほうが有利だということです。
なぜ弱いつながりのほうが有効なのでしょうか。強いつながり――親しい仲間同士は、お互いに似たような環境にいるため、そこでは既知の情報しか流通せず、新しい情報やチャンスは入ってきません。一方、弱いつながりの場合、自分とは属性や価値観のまったく違うさまざまなネットワークに接触する機会が増えます。基本的に自分とは違う社会空間で生活しているので、自分の知らないことを知っていたり、自分のキャリアの延長線上にないような人を紹介してくれたりする可能性が高いのです。
グラノヴェターの調査はアメリカでのものでしたが、国内の調査でも、弱いつながりの効果は時代とともに大きくなっています。ある調査によると(※2)、1985年の東京では、強いつながりを通じた転職と弱いつながりを通じた転職では、強いつながりを通じた転職のほうが、転職後の年収アップ、転職した会社への帰属意識アップ、職務満足度アップといったよい結果につながっていました。
これが、2002年の東京では結果は逆転し、弱いつながりを通じた転職のほうがより規模の大きい企業への転職、転職後の年収アップなどの望ましい結果につながっているのです(※2)。