建前は日米同盟強化、実態は自衛隊単独防衛という現状を早く是正しなければ、国民が勘違いしたまま多大なる犠牲を強いられることにもなりかねない。米軍からすれば「なんだか日本はいい加減なことをやっているね」という話になってソッポを向かれることになるかもしれない。
なぜ、こんな事態になっているのか。反発を恐れず敢えて言えば、陸上自衛隊と航空自衛隊は米軍との共同行動を強く意識せずに、あるいはその機会が極めて限られたまま冷戦時代を過ごし、その組織文化をそのまま引き継いでしまったからではないか。
自衛隊の机上演習で
米軍がいないことにされたワケ
今でも忘れられない現役時代の思い出がある。
統合幕僚監部が発足されるはるか前の1990年代後期、陸海空自衛隊が参加する机上演習を行った際の話だ。演習には一定のシナリオを用意する。外国が日本に攻めてきて、航空自衛隊はこの空域で敵の戦闘機、爆撃機の侵入を防ぎ、海上自衛隊は敵の艦艇を沈めるものの、ある島に上陸を許すこととなり、この敵の陸上部隊を陸上自衛隊が撃破する。おおざっぱに言えば、こんなシナリオの下で演習が行われた。
たまたま、当時海将補で某部隊の幕僚長であった私が、敵の占領部隊を排除する統合作戦の指揮官役に指名された。演習が進むにしたがって、私は少しチャチャを入れたくなってしまった。
「ところで、今、アメリカ軍は何をしているの?」
私がこう聞いたところ、陸上自衛隊の作戦幹部は「えっ?」とびっくりした表情になる。よせばいいのに、「アメリカは来ていないの?」と質問を重ねた。演習では、米軍はいないことになっていた。
端的に言って、陸上自衛隊は、米軍の来援を念頭に置いた作戦構想を持っていなかったのだ。悪いのは陸上自衛隊だけではない。1976年に閣議決定された防衛計画の大綱では「基盤的防衛力構想」が打ち出された。基盤的防衛力構想とは、ソ連に真正面から対抗する防衛力は追い求めず、「限定的かつ小規模な武力侵攻」を独力で排除する能力だけは持っておき、米軍が来援するまでの時間を稼ぐという考え方だ。