「陸上戦力不要論」について考える写真はイメージです Photo:PIXTA

陸上自衛隊の存在理由の一つは「限定的かつ小規模な武力侵攻を独力で排除できる防衛力」。想定される脅威はロシア(旧ソ連)だが、「本当に攻めてくるのか?」という疑念から、政治家やメディアでは根強く「陸上戦力不要論」が唱えられてきた。この「陸上戦力不要論」に対する、元・海上自衛隊司令官である著者の考えとは――。※本稿は、香田洋二『自衛隊に告ぐ―元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

“若きエース”らで交わした
自衛隊の体制を見直す議論

 1986年から1987年にかけて、防衛庁内では、自衛隊の体制を根本から見直す議論を行っていた。私が30代後半のころの話だ。

 当時、防衛庁防衛局に課長待遇の「計画官」というポストがあった。この計画官の下に、陸海空それぞれの幕僚監部防衛課防衛班に所属する担当者が集められ、将来の自衛隊のあるべき姿を話すことになった。週に2回ぐらいのペースでああでもないこうでもないと激論を交わす場である。

 1976年に防衛計画の大綱が策定され、限定的かつ小規模な侵攻を独力で排除できるだけの防衛力を持つという「基盤的防衛力構想」が打ち出されていたが、本当に基盤的防衛力構想のままでいいのか。ソ連の脅威を分析し、日米共同対処のあり方を考えるとともに、欧州情勢も視野に入れ、あるべき防衛力を徹底的に議論しようという試みだった。

 要するに、将来的に防衛計画の大綱を見直すとしたら、どういう考え方で臨むべきかという議論だった。