中国と台湾写真はイメージです Photo:PIXTA

昨年、中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習をおこなったことで、台湾は警戒レベルを引き上げた。もし、中台が衝突すれば、日米やその他の国々を巻き込む全面戦争が始まるかもしれない。気鋭の軍事研究者2人が、可能性の高いいくつかのシナリオを議論する。※本稿は、小泉悠・山口亮『2030年の戦争』(日経BP 日本経済新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

中国と台湾の衝突を機に
日米も巻き込んだ戦争に発展

小泉悠(以下、小泉) 中国による海上封鎖のシナリオとは、言い換えれば戦争手前の「グレーゾーン事態」が起きるということですね。私はその可能性が一番大きいのかどうかはわからないと思っています。結局、中国の意図は不透明であり、中国がいきなり台湾を侵攻してくる可能性も排除できません。実際に中国が台湾侵攻をするかどうかは別として、能力的には可能になってきています。だから、そのシナリオもきちんと考えておかなければなりません。

山口亮(以下、山口) 中台の衝突、さらに日米やその他の国々を巻き込むような全面戦争になるシナリオはいくつか考えられます。それぞれの確率についても議論できますが、ここでは触れません。ただ、仮に確率が同等だとしても、偶発的な事態から始まる戦争はもっとも予想が難しく、コントロールも不能なので非常に厄介です。

小泉 キューバ危機の時は、いくつもの思い違いがありました。米国は、ソ連はまだキューバに核兵器を運び込んでいないと思っていたので、ケネディ大統領は直前までキューバに部隊を上陸させる気でいました。