私は、日本の主権など、どうでもいいと言っているのではない。むしろ日本の主権を死守するために、最も合理的な方法を考えなければならない、と言っているのだ。それが島嶼奪還重視だとは、どうしても思えない。

 ここ10年の間、陸上自衛隊は与那国島、奄美大島、宮古島、石垣島に次々と部隊を置き、沖縄本島の部隊も増強するとともに、水陸機動団を設置して離島奪還作戦に備えている。特に反対はしないが、離島奪還を至上命令とするのであれば、部隊増強はこんなものでは済まないはずだが、そのための論議と手配はない。

 それはともかく、島嶼奪還の重視は政府全体の方針でもある。そうなると、海上自衛隊、航空自衛隊の基本任務まで変わってしまいかねない。いや、すでに変わりつつあるのだ。すでに触れた海上自衛隊のFFM(編集部注/新型護衛艦)、哨戒艦(編集部注/FFMよりも小さい船)へのシフトは、その証左に他ならない。こうした中で生まれたのが統合作戦司令部だ。

シーレーン防衛の軽視は
日米同盟の軽視につながる

 私には、日本人が「統合」という言葉に酔っていると思えてならない。現在の島嶼防衛を基軸とした統合運用の強化は、海上自衛隊によるシーレーン(編集部注/海上交通路)防衛の軽視という危険をはらんでいるのに、その事実に気付いていない気がするためだ。

 統合であろうとなかろうと、海上自衛隊のシーレーン防衛と航空自衛隊の防空は止めるわけにはいかない。とりわけ憂慮に堪えないのが、海上自衛隊の後輩諸君が、その重要性を防衛省・自衛隊の内部で声高に主張しているようには思えない点だ。

 シーレーン防衛が、米軍の来援基盤を構築する上で必要不可欠、つまり日米安保体制の骨幹であり、日米防衛体制の基礎であることは何度でも強調したい。そのシーレーン防衛を軽視するということは、日米同盟そのものを軽視することにもつながる。日ごろ政府は「日米同盟強化、日米同盟強化」と呪文のように繰り返しているが、実際には言っていることとやっていることが、まるでチグハグなのだ。