「お金は大切だけど、お金ばかり考えて一生を過ごしたくない!」
物価上昇、株価変動など、お金の不安が尽きない時代。どうすれば、自由に豊かに生きられるのか? 娘のために「お金と投資」のアドバイスを綴った人気ブログを書籍化したのが『改訂版 父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』(ジェイエル・コリンズ著)だ。投資歴50年を通じて「経済的自立=人生の選択肢を持つこと」と説く著者が、時代に左右されない投資戦略と人生哲学を紹介している。
作家の橘玲氏は「お金持ちになるには、シンプルな方法がひとつあるだけ。あなたはなぜ、それをしないのか?」と評し、『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルは「美しくシンプルな本だが、人生に深い影響を与える」とコメントを寄せている。約10年ぶりに改訂となるベストセラーの本書から、その内容の一部を特別公開する。

【投資の神様が教える】「お金持ちの人」が決して忘れないことPhoto: Adobe Stock

お金を失わないとは、
どういうことか?

「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェットの有名な言葉があります。

 ルール1 決してお金を失わないこと
 ルール2 決してルール1を忘れないこと

 残念ですが、多くの人は、彼の言葉を額面どおりに受け取り、バフェットは市場を自由自在に出入りできる魔法を持っていて、絶対に下げ相場を経験しないでいられると思っています。

 それは正しくありません。実際に、彼は市場を出入りすることの愚かさをこう話しています。

「ダウ平均が19世紀末に66ドルで始まり、100年後に1万1400ドルになっているのに損をするなんて、どうやればできるのでしょうか。ところが、多くの人は損をしています。それは、うまくやろうとして、市場から出たり入ったりを繰り返したからです」

 2008~2009年の大暴落のとき、バフェットも250億ドルの「損失」を出し、資産を620億ドルから370億ドルに減らしてしまいました。

 それでも370億ドル残っているというので、当時、私は友人に「250億ドルの損失を出してみたいものだ」と言い回っていました。

 私たちと同じで、バフェットも市場の上がり下がりのタイミングを当てることはできません。そのタイミングを狙うことは愚かなことだと言い、彼はそれをやらなかったのです。

バフェットが考える投資

 それに、普通の人と違って、バフェットは損失を出しても、パニックになって慌てて売るようなことはしませんでした。彼にとって市場の下落は、当然、起こることなのです。

 市場が下落し、新たなチャンスを提供していると考えて、彼は投資を続けました。

 市場が回復したとき、彼の資産も大きく回復しました。踏みとどまっていた人々の資産も回復しました。250億ドルの「損失」と括弧書きにしたのは、こんな事情があったからです。

 250億ドルを失っても、バフェットがパニックにならなかった理由はたくさんあるでしょう。

 まだ370億ドル残っていたことも理由の1つでしょうが、投資しているお金を彼がどのように考えていたかにも大きな理由があります。

 バフェットは投資のことを「事業を所有している」と言います。株式の一部を所有していることもあれば、企業を丸ごと所有していることもあります。

 ある事業の株価が下がるとき、彼はこう考えます。「それでも自分が所有している事業の価値はまったく変わっていない」と。

 企業が健全である限り、株価の変動は重要ではありません。短期的に株価が上下しても、優良な企業は現実にお金を稼ぎ、そうすることで企業の価値は長期で見れば上がっていくからです。

(本稿は、『改訂版 父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』を一部抜粋・編集したものです)

ジェイエル・コリンズ JL Collins

ファイナンシャル・ブロガー(ブログ「jlcollinsnh.com」主宰)
1975年から投資を行っている個人投資家。何度も転職する中で、収入の範囲内で生活するようになり、気がつけば夫婦どちらも働かなくても暮らせるようになっていた。実践したのはシンプルな投資だけ。収入の半分を投資、借金をしない、バンガード創業者ジャック・ボーグルの教えに従ってインデックスファンドに投資する。これだけで経済的自由を手に入れた。
2011年、娘宛てに「お金と投資」についての手紙をしたためる。その内容をブログに発表すると、世界中から注目されるようになる。