AIが「使えるかどうか」は、人間側の「使い方」で決まります。
そう語るのは、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に思考・発想の研修をしてきた石井力重氏だ。そのノウハウをAIで誰でも実践できる方法をまとめた書籍『AIを使って考えるための全技術』が発売。全680ページ、2700円のいわゆる“鈍器本”ながら、「AI回答の質が目に見えて変わった!」「値段の100倍の価値はある!」との声も多く話題になっている。思考・発想のベストセラー『考具』著者の加藤昌治氏も全面監修として協力し、「これを使えば誰でも“考える”ことの天才になれる」と太鼓判を押した同書から、AIの便利な使い方を紹介しよう。

頭のいい人がChatGPTを使って「思考を具体的に言語化する」ときにやっている“賢い聞き方”とは?Photo: Adobe Stock

アイデアが「よくわからない」と言われてしまう理由

 ミーティングの場にアイデアを出した途端、上司や他のチームメンバーが「なんだか、よくわからない……」的な反応になってしまって、場が静かになる……。新商品やサービス、新規事業プロジェクトあるある、です。

 そうなってしまうのは、そのアイデアには、まだ「抜け」や「漏れ」があるからです。
「アイデアと企画は違う」と言ったとおり、最終的に「アイデア入りの企画」として仕上げる上で、必ず満たしていなければならない要素があります。それが欠けているから、周りの人はそのアイデアに「ピン」とこないのです。評価をしようにも情報が足りないから、そもそも「わからない」となる。

 熟練のアイデアパーソンたちであれば、まだ企画として整っていない、曖昧さが残るアイデアだけを見てピンときたりもします。ですが一般的なビジネスシーンは、アイデアの状態だけを見て細部までを判断することはできないのが普通でしょう。

アイデアを「企画」にするために必要な9つの要素とは

「企画」に必要な代表的な要素は5W1Hです。
「Who」「Why」「What」「Where」「When」、そして「How」。これらの要素が埋まっていなければ「アイデア入りの企画」としての良し悪しは判断できず、「アイデアは良いと思うんだけど……」と言われたりしてGOサインが出にくい。そうならないよう、要素ごとにアイデアを具体化し、ブレイクダウンするプロセスは欠かせません。

 企業などの組織が企画を判断する際には、さらにプラスされているとベターな要素があります。
 1つは、「Whom」。「Who」が「誰がやるか」なら、「Whom」は「誰とやるか」です。

 加えて、「How much」と「How many」費用とスケール感も重要な判断材料です。

 要するに、1行アイデアを「6W3H」が整理された状態に整えられると、内容の良し悪しは別として、大まかにGO/Not GOの評価ができるようになります。

 プレゼンテーションや会議提出の際は、最終的には数ページほどの資料を作成することにはなるでしょう。でも、いきなり頭から資料の作り込みを始めてしまうと、行き詰まってしまいますよね。その作業に入る前にアイデアを「6W3H」で整理しておけば、あとはそれぞれの要素を深掘りして広げていくだけで済みます。

 すべての企画の土台に、この「6W3H」があるのです。

9つの要素をAIで瞬時に言語化する技法「6W3H」

「6W3H」に整理すれば、アイデアが具体化される。そうは言っても、全部で9項目もあります。パッと浮かんだだけのアイデアを、そこまで細分化、具体化していく作業は簡単ではありません。「そんなとこまで考えてないよ~」と、音を上げたくもなるでしょう。

 そんなときに使ってほしいのが、足りていない要素をAIの力を借りて肉付けする技法その25「6W3H」です。投げたアイデアに対して、AIが9つの要素を具体的に言語化してくれます。

 こちらが、そのプロンプトです。

<AIへの指示文(プロンプト)>

〈アイデアを出したスレッドに続ける、もしくはアイデアを記入する〉
 先にあげたアイデアを具体的なプランに発展させるために、6W3Hのすべての要素を具体的に述べてください。6W3Hの各要素は以下です。
 What(何を):アイデアの内容や目的を明確にする。
 Why(なぜ):アイデアの背景や理由、価値を明確にする。
 Who(誰が):アイデアの対象者や関係者を明確にする。
 Whom(誰と):アイデアの協力者やパートナーを明確にする。
 Where(どこで):アイデアの場所や範囲を明確にする。
 When(いつ):アイデアのタイミングや期間を明確にする。
 How(どうやって):アイデアの方法や手段を明確にする。
 How much(いくらで):アイデアのコストや収益を明確にする。
 How many(どれだけ):アイデアの数量や規模を明確にする。

 AIは1行だけのアイデアや、6W3Hとして不足している情報を補完すること、また6W3Hの要素間の整合性をとる作業がとても上手です。

 アイデアを企画書に整えていく場面はもちろん、場に出たアイデアがどれも抽象的で、「もうちょっと具体的かつ現実的にしてから検討したい」というときにもおすすめ。技法「6W3H」を使えば、たった数分で各案を具体的に出力してくれます。その後、じっくり検討するだけの時間的余裕をAIが用意してくれるのです。

 AIからの回答を100%採用する必要はありませんが、アイデアを「アイデア入りの企画」として詰めていく際のたたき台としては充分に活用できます。企画検討の軸もわかりやすくなり、「机上の空論」で終わっていた会議も、実現へと向けた次なる一歩を踏み出せる場に変わるでしょう。

 技法その25「6W3H」、ぜひ活用してみてください。

(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。この他にも書籍では、AIを使って“思考の質”を高める方法を多数紹介しています)