銀行の意図が利用者に正確に伝わらなければ、結局、入力ミスで手数料を取られて怒った利用者から、抗議の電話が殺到するでしょう。

「察し合い」に甘えた説明は、あとで必ずツケが回ってきます。意図を伝える説明文の作成段階から汗をかいておけば、後で楽もできるのです。

うんざりさせるのが目的?
読む気をなくす謝罪広告

 世の中には、意識的に分かりにくくする文章もあるのかもしれません。たとえば次に紹介するのは、ある企業の謝罪広告ですが、読んでもらいたくない、理解されたくないと思っている文章にしか見えません。

《当社(旧商号「○○○○○株式会社」)は、新たな□□□□機に係わる電気通信役務の契約を締結する一般消費者に対する「△△△△△△」の商標を付した□□□□機のうちカメラ付き□□□□機の新機種及び売れ筋機種の茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県及び長野県の区域における販売に関し、取引先代理店から仕入れて小売販売を行う販売店に対し、店頭又はチラシ広告において○○○○○株式会社が一般消費者に対する販売価格の目的として定めた参考価格又は想定価格と称する価格を表示するようにさせていた行為が、独占禁止法に違反するとして、令和六年×月×日、公正取引委員会から審決を受けました。》

 こんな文章では、文字面を見ただけでウンザリし、読もうという意欲もわきません。とくに注目して欲しいのは句点(。)で終わる1つの文の長さが、280字以上もあるという点です。

契約を成立させるため
分かりにくくしている?

 違法行為を認め謝罪することを伝えるつもりなどまったくなく、むしろ読んでもらえないほうがありがたいに違いありません。

 きっと、次のような「分かりやすい文章」では、かえって都合が悪いのでしょう。

《当社(旧商号「○○○○○株式会社」)は、一部地域の小売店に対して、一部の当社商品の店頭またはチラシ広告に掲載する販売価格を、当社の販売目標価格と同じにするようにさせていました。

その商品は「△△△△△△」の商標を付したカメラ付き□□□□機の新機種及び売れ筋機種。地域は茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県及び長野県です。

この行為が独占禁止法に違反するとして、令和六年×月×日、公正取引委員会から審決を受けたことをお知らせします。》