生命保険の契約書の裏に小さな文字でビッシリ書かれた保険約款も同様です。
「○○の場合は支払いません。××の場合は支払いません。△△の場合は支払いません。」契約の署名、捺印の前にお客様に読んで理解されては困る文章がビッシリと書かれているからです。
もしも、これが大きく読みやすく書かれていたら、お客様が契約をためらってしまうでしょう。
これらの文章がわざと分かりにくくされているのなら、こんな文章が書ける人は、逆にその気になれば「分かりやすい文章」が書けるのかもしれませんね。
お役所の書類でしぶとく生き残る
長く分かりにくい文章
お役所の文章は正確さだけが追求され、分かりやすさは度外視されているようです。ところが、分かりにくいために、結果として不正確に読まれてしまうのは何とも皮肉です。
『「分かりやすい表現」の技術』(編集部注/著者・藤沢晃治の著作)で、年末調整申告書に書かれた「分かりにくい」文章を紹介しました。刊行からしばらく経ちますが、相変わらず次のような説明文があります。
藤沢晃治『「分かりやすい文章」の技術 新装版 読み手を説得する18のテクニック』(講談社)
《損害保険料控除の対象となる損害保険料とは、あなた又はあなたと生計を一にする親族の家屋で常時その居住の用に供しているものや、これらの人の生活に通常必要な家財を保険又は共済の目的とする損害保険契約、火災共済契約などの損害保険契約等又はこれらの人の身体の傷害に基因して保険金や共済金が支払われる損害保険契約等、あるいはこれらの人の身体の傷害若しくは疾病により入院して医療費(医療費控除の対象となるものに限ります。)を支払ったことに基因して共済金が支払われる損害保険契約等に基づき、あなたが本年中に支払った保険料や掛金をいいますから、損害保険会社等が発行した証明書類などによって、控除の対象となるものかどうかを確認してください。》
『「分かりやすい表現」の技術』を世に出してから、世間では気のせいか、分かりにくい表現が改善されつつあるように思います。しかし約300字がひとつながりのこの文章は、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」の裏面にしぶとく生き残っています。







