米保守派が「ウォークペディア」を攻撃する理由ILLUSTRATION: EMIL LENDOF/WSJ

 歴史は勝者が書くものかもしれない。しかし、米実業家イーロン・マスク氏はしばしば、敗者がウィキペディアの項目を執筆していると不満を漏らしてきた。

 今、米国の保守派がその現状を変えようとしている。米メディア大手よりも多くの閲覧者数がいるこの地味なウェブサイトに焦点が当てられ、保守派からの圧力を受ける最新の標的となっている。

 常時オンラインではない人々にとって、ウィキペディアを巡る先週の騒動は衝撃的だった。同サイトが信頼性を保つという目標を掲げていることを考えると、なおさらだ。多くの人にとって、ウィキペディアは現代の百科事典である。ボランティアによって書かれ編集される同サイトは、共同創設者のジミー・ウェールズ氏がかつて述べたように、「人類の全知識の総和」への無料アクセスの提供を目指している。

 そのために、ウィキペディアは項目の執筆方法について三つの中核的な方針を順守している。各記事は中立的な視点を持ち、公表された情報源からの情報で検証可能であり、独自の研究は含まない。

 方針の2番目と3番目は、情報が既知のメディア情報源から要約されたものであることを実質的に意味する。これらの方針とその実施方法が、マスク氏や、ホワイトハウスの人工知能(AI)担当責任者デービッド・サックス氏など、ウィキペディアを偏向したサイトと見なして批判する向きをいら立たせる。

 それを「ウォーク(社会正義に目覚めた)ペディア」と呼ぶ向きもある(訳注:ウォークは保守派がリベラル派を批判する際に使う言葉)。彼らは、あたかも世界中の6400万を超える項目が主流メディアのうそによってあおられ、ネット検索結果に影響を与えるプロパガンダを生み出しているかのように語る。ウィキペディアはAIチャットボットの知識の基盤として機能しているため、この脅威は特に懸念されるという。