
ベンチャーキャピタル(VC)の基本原則は、10社にそれぞれ1ドルずつ投資し、そのうち3社の評価額がゼロになり、1~2社が10ドル以上になり、残りはまあまあの結果になることを受け入れることだ。「勝ち組」が「負け組」の損失を十分に補うが、評価額が10倍になる投資先を確保できるのではと期待しながら資金を分散投資する。
人工知能(AI)への投資も次第に同じ考え方になってきているが、分散投資の要素はない。これにより投資家は、人間に匹敵するかそれを上回る汎用(はんよう)人工知能(AGI)という一つの大きな賭けを追い求める中、あらゆるリスクにさらされている。AGIはチャットボットではなく、人間の脳に代わる真に有能な存在だ。映画「ターミネーター」、「2001年宇宙の旅」に登場するコンピューターの HAL 、「ブレードランナー」を思い浮かべてほしい。
AGIと呼ばれるものが実現すれば、社会に大きな変化をもたらすほか、 生産性の大幅な向上 、そして国家による接収がない限り、文字通りSF世界のような規模の利益を生み出す可能性がある。これは、AI業界の著名人らがデータセンターに数兆ドル規模の投資を行う計画を打ち出す際に強調する、10倍以上のリターンが期待できる賭けだ。
その過程で、「エージェント型AI」やその他の技術が生まれ、これらが広く採用されれば十分な生産性向上をもたらし多額の利益を生み出すかもしれない。ただ問題は、AGI開発競争により参入コストが増加の一途をたどっており、それほど魅力的ではない技術の普及の見通しでさえ不透明なままだということだ。
一般の投資家はVCの世界から除外されており、主にオープンAIなどの非公開企業に資金の一部を投資するファンドを通じて、あるいは手元資金の多くをAI研究や非公開のAI企業への出資に振り向けている大手テクノロジー企業を通じてAIに投資している。