
2025年度上半期、全国の企業倒産件数は12年ぶりに5000件を超えた。株高やインバウンド増など明るい材料がある一方、物価高や人手不足に苦しむ中小企業では「あきらめ型倒産」が増加。経営者の高齢化による休廃業も加速し、事業継続の限界が浮き彫りとなっている。下半期は、自動車・建設業などの動向や、新政権による物価高対策の行方が焦点となりそうだ。(帝国データバンク 情報統括部 情報取材課長 阿部成伸)
2025年度上半期は
12年ぶりに5000件超え
帝国データバンクは10月8日に全国企業倒産集計(負債1000万円以上、法的整理を対象)を発表。2025年度上半期(2025年4月~9月)の倒産件数は、前年同期から3.1%増(156件)の5146件となり、年度上半期として12年ぶりに5000件を超えた。
2025年度上半期を振り返ると、4月1日に3万5961円(始値)だった日経平均株価は、9月25日には終値で最高値となる4万5754円まで上昇したほか、大阪・関西万博や世界陸上東京大会などの世界規模のイベント開催もあり、訪日外客数(25年4月~8月)は約1784万5000人と前年同期から15.5%増加。そうした要素が経済にプラスの相乗効果を生む一方で、物価高、価格転嫁、人手不足、賃上げといった経営課題の対応に限界を感じて事業継続を断念する中小事業者の「あきらめ型倒産」を中心に倒産は小幅ながら増加が続いている。
粉飾倒産も続いている。2025年度上半期で話題となったのはオルツ(東証グロース)だ。7月30日に東京地裁へ民事再生法を申請したが、過去4期の売り上げについて、最大9割が循環取引による過大計上だったことが判明。ステークホルダーとの関係性やチェック体制のあり方が問われるきっかけとなった。
近年話題となった複数の粉飾倒産事案を事前に見破ったある金融関係者は、そうした企業の共通点について「コロナ禍で安定した業績を装っている」と話す。財務諸表だけに目を向けるのではなく、発想をアナログ化して、数字と実態の乖離(かいり)や違和感に気づけるかが重要だ。