タウリンのスゴすぎる効能は
生命の誕生にも一役買っていた

 タウリンは無味無臭の白い粉末で、ほとんどの生物の体内に存在しています。ヒトの体内にも体重の約0.1%のタウリンが存在しており、体重60キロの方であれば約60グラムのタウリンを体内に有していることになります。

 タウリンは主に肝臓や脳で合成される他、肉や魚を食べることによって外部から摂取することもできます。我々が体内でタウリンを合成するように、牛や豚、鶏、魚も体内でタウリンを作り出しており、量の多寡はありますが、これらの食材などにもタウリンが含まれているのです。

 タウリンの役割は、一言でいえば「生体恒常性維持機能」。つまり、細胞や臓器が正常に働けるように細胞内の環境を整えたり、外部環境の変化から細胞を保護したりする役割を担っています。タウリンはほぼ全身の組織に存在し、日々、細胞や臓器が正常に機能するよう、機械の潤滑油のような働きをしているのです。

 例えば、この生体恒常性維持機能のひとつに「浸透圧の調節」が挙げられます。

 地球上の生命体は約38億年前に海の中で誕生したのですが、体内の塩分濃度は海水よりも低いため、浸透圧を調節しなければ細胞内の水分が体外に排出され命を落とすことになってしまいます。そこで、海水と体内の浸透圧差を調節するために用いられたのがタウリンなのです。

 このような機能から、タウリンは陸で暮らす動物よりも魚や貝類に多く含まれることが分かっています。

 また、野菜にタウリンが含まれていないのに対し一部の海藻類にタウリンが含まれているのも、この浸透圧調節の機能が関係していると考えられています。

タウリンのルーツは漢方にあった!
薬として歩んだ知られざる歴史

 生命誕生の頃から生物の体内に存在しているタウリンですが、人類がタウリンを“薬”として利用してきた歴史も意外と古いのです。

 タウリンは今から200年ほど前の1827年に、ドイツの2人の科学者によって牛の胆汁から発見され、雄牛を表すラテン語の「タウルス」にちなんでタウリンと名づけられました。