しかし中国では、それよりはるか昔からタウリンが漢方薬の一成分として用いられていました。

 中国には、紀元前から強心、鎮静、解毒、疲労回復、滋養強壮、不老長寿などに効くとされてきた「牛黄」という漢方があります。これは牛の胆嚢中にできる胆石のことで、後の研究でタウリンがふんだんに含まれていることが分かったのです。

 日本でもタウリンは戦前・戦中から大いに利用されてきました。第2次世界大戦中には海軍がタウリンの効果に注目し、戦闘機のパイロットや潜水艦の乗組員に投与していました。

 急上昇と急降下を繰り返すパイロットは疲労が激しく、搭乗のたびに丸一日休みを取る必要があったのですが、タウリンを投与したところ短時間で体力が回復したそうです。

 また、タウリンは網膜に高濃度で存在し、目の正常な機能の維持に重要な働きを担っています。艦艇の乗組員がタウリンを摂取することで、視力の増強が期待でき、目視での敵艦の発見等に役立っていたと考えられます。

 それ以外にも、タウリンによって結核やリウマチの痛み、じん麻疹の痒みが改善することが知られており、戦前にはそのような患者にタウリンを注射することも行われていたようです。いわば鎮痛剤やかゆみ止めとしてタウリンが用いられていたのです。

 今でこそタウリンは化学合成によって生成することができますが、戦前や戦中は全て「天然のタウリン」が用いられていました。北海道などでタウリンが豊富に含まれるタコ等の海産物を煮詰め、その煮汁を濃縮することでタウリンを調製するのです。

 海外でもタウリンの研究は行われていましたが、実際に海産物からタウリンを抽出し、実用的な目的で利用していたのは日本だけだったと言います。

 このような状況の中で戦後、タウリンの作用に注目した大正製薬がタウリン入りの栄養ドリンクを開発。「リポビタンD」として大ヒットしたというわけです。

若返り効果だけじゃない
大病対策も叶う秘めた効能

 人類、とりわけ日本人とは戦前から密接な関係があったというタウリン。現在認められている効能にはどのようなものがあるのでしょうか。