陸の孤島となった渋谷~鷺沼間では、迂回ルートのバスは大混雑、沿線からレンタル電動キックボードが消える事態となり、梶が谷より都心側で折り返し運転ができなかったのかという声があったが、田園都市線の車庫(留置線)は梶が谷、鷺沼、長津田にあるため、梶が谷が塞がれると車両が出庫できなかったのだ。
回送列車が存在するのに
各駅停車に青信号を表示
問題はなぜこのような事故が発生したかである。田園都市線はATC(自動列車制御装置)と呼ばれる安全性の高い信号システムが導入されており、衝突は本来、あり得ない。
鉄道の安全確保は、同じ区間に2つの列車を入れないことが基本だ。鉄道車両は非常に大きく重い上、鉄レールと鉄輪で走行するためすぐには停車できない。目視してからでは間に合わないので、信号機などで事前に通知する。
近年は無線式の信号保安装置が登場しているが、100年以上にわたり用いられてきたのが、レールと車輪で電気回路を構成し、列車の在線を検知する「軌道回路」だ。これにより、列車の後方区間に自動的に赤信号を表示できるようになった。
だが、これでは信号の見落としなど人間の注意不足で発生する事故を防げないため、赤信号を無視した場合に自動でブレーキがかかるATS(自動列車停止装置)が開発された。そして、これを発展させ、先行列車との距離に応じて連続的に速度制御を行うのがATCだ。
田園都市線のATCは軌道回路で列車を検知し、前後の間隔から計算された許容速度、カーブやポイント(転轍機)の制限速度などを運転台に5キロ刻みで表示。速度を超過した場合は自動的にブレーキが作動する。しかし、今回の事故では、回送列車が存在していたにもかかわらず、同区間に進入する各駅停車に青信号が表示されたのである。
10年前の線路改修における
システム設定のミスが原因
安全対策の根幹が揺らぐ事態だったが、真相はあまりにも単純なものだった。東急電鉄は7日の記者会見で、2015年3月に梶が谷駅で行った線路改修の際、連動装置の信号条件設定が不十分だったことが原因だったと発表したのである。