今年2月、ある車椅子ユーザーが「今日も今日とて抜かされた エレベーターほんっと嫌い」とツイートした。訴えたのは「車椅子ギャル さしみちゃん」だ。このツイートについては共感、同情の声が寄せられた一方で、誹謗(ひぼう)中傷も投げかけられる「炎上」騒ぎとなったが、さしみちゃんはその後もさまざまなメディアで車椅子移動の実態を訴えつつ、オンライン署名サイト「Change.org」で「国交省にシンボルマークと優先表記の大型化を求めます」との署名を3月25日から開始するなど、現状を変えようと奮闘している。さしみちゃんとは一体どんな人物なのか、何を感じ、主張しているのか。筆者は9月上旬、さしみちゃんに会いに行ってみた。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
日本ではただ1人の
先天的障害があるさしみちゃん
27歳のさしみちゃんは「点状石灰化骨異形成症」という日本でただ一人の先天的障害があり、車椅子を利用している。代名詞である「ギャル」ファッションは、ロリータやパンク、レディー・ガガなど、派手なファッションが好きな彼女の自己表現である。
だが、同時にそれは生き様を示すものでもある。障害者はとにかく「なめられる」という彼女は、特に黒髪・スーツの就活時代は本当にひどい目にあったと語る。そんな社会を変えていきたいと思う中、人の関心を引きつけるために、車椅子とギャルというかけ離れた要素を組み合わせたのが車椅子ギャルだという。自分の信念で新しい世界を切り開くマインドという意味では、彼女はまさにギャルであった。
都内でグラフィックデザイナーとして働く彼女は頻繁に地下鉄に乗って移動する。事前に連絡しても何十分も待たされるJR線は「ほぼ使えない」が、地下鉄や私鉄は電車に乗る分にはスムーズだという。だが問題はホームから地上までの移動だ。