逆境でわかる“ダメなリーダー”と“本物のリーダー”の決定的な差
【悩んだら歴史に相談せよ!】続々重版で好評を博した『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者で、歴史に精通した経営コンサルタントが、今度は舞台を世界へと広げた。新刊『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)では、チャーチル、ナポレオン、ガンディー、孔明、ダ・ヴィンチなど、世界史に名を刻む35人の言葉を手がかりに、現代のビジネスリーダーが身につけるべき「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く方法を解説。監修は、世界史研究の第一人者である東京大学・羽田 正名誉教授。最新の「グローバル・ヒストリー」の視点を踏まえ、従来の枠にとらわれないリーダー像を提示する。どのエピソードも数分で読める構成ながら、「正論が通じない相手への対応法」「部下の才能を見抜き、育てる術」「孤立したときに持つべき覚悟」など、現場で直面する課題に直結する解決策が満載。まるで歴史上の偉人たちが直接語りかけてくるかのような実用性と説得力にあふれた“リーダーのための知恵の宝庫”だ。

窮地から学ぶ
サッチャー流リーダーシップの本質
1982年、イギリスがサッチャー首相の時にアルゼンチンと武力衝突したフォークランド戦争は、単なる領土争いにとどまらず、「逆境に直面したときのリーダーシップとは何か」を体現する歴史的なケースでした。
サッチャーがこの紛争で示した姿勢から、現代の組織や企業経営においても通用する3つのリーダーの心構えが導き出せます。
➊「恐怖」を知る者だけが、真の「勇気」を持てる
●強い精神と勇気を持つこと――恐れていても、前に出る勇気
1982年、サッチャー政権は失業率の高止まり、経済の停滞、支持率の低迷といった苦境にありました。そんななかで発生したフォークランド戦争に対し、「作戦を誤れば政権崩壊は免れない」という状況下での即断は、並大抵の覚悟ではできないものでした。
しかもサッチャーは、心の内では若者たちの命を危険にさらすことへの強い葛藤を抱えていたといいます。それでも彼女は、1日わずか4時間の睡眠ですべての指揮をとり続けたのです。
現代の経営でも同様です。企業の存続が危ぶまれる局面で逃げず、あえて前線に立ち続けるリーダーにこそ、人はついていく。労働環境の改善が浸透している現代からすると、前近代的な話にも聞こえかねませんが、実際、年間350日以上働き続け、現場の最前線で再建を指揮した経営者が倒産寸前の企業を立て直した例もあります。
恐れがあるからこそ、勇気が意味を持つともいえるでしょう。
❷「知らない」と認める強さが、最強のチームを生む
●メンバーの強みを活かすこと――自分の弱さを知る者こそ、強いチームをつくれる
サッチャーは軍事の素人でした。それを自覚したうえで、彼女は専門家の判断を信じ、口を挟むことなく参謀の提案を即座に採用しました。
ときには作戦に対して国内の士気の維持などに配慮を求めることもあったそうですが、それでも軍部の判断を尊重し、無理に介入することはありませんでした。この姿勢が、結果として軍の集中力と士気を高め、最善のタイミングでの勝利につながりました。
「任せる」とは、丸投げではない。相手を信じ、責任を共有すること。それが、逆境で機能する組織を育てる鍵です。