私は「転職」というものを社会がどうとらえてきたか、そのとらえ方がどう変化してきたのかを知っているというより、当事者として「体験してきた」、いわば「生き証人」です。生き証人の役割とその責任において、未来に向けて良い職場環境を作っていくために文章を書き、みなさんのお役に立てればと思っているのです。
私がこの仕事を始めた1993年はすでにバブル経済が崩壊して、平成不況が始まっていた頃です。
バブルが崩壊した1990年から労働市場は大きく様相を変えてきていました。そんな社会の動きを読んで…と言いたいところですが、そんな世間の経済状況とはほとんど関係なく、たまたま私は個人的な事情で、自分自身のライフプランに沿った転機を迎えていました。32歳、当時では出産適齢期を少し過ぎた年齢でようやく第一子を出産したのが1992年のことです。
それまで新卒で入社して10年勤めた会社を育児休業で少し休んでいた私は、忙しくて走り続けていた人生を一旦小休止し、立ち止まりました。初めて自分の今後の人生、子どもを育てながら働くというライフプランについて、どうしようかと真剣に向き合わざるを得なくなりました。こう書くと、計画なく産んだのか?と言われそうですが、産んでみて初めてわかることが多すぎました。
出産後に世界が一変!
子育ては計画通りにいかない
むしろ計画はバッチリでした。夫の両親にサポートしてもらおうと、同居するため家を二世帯住宅に建て替え、保育園にも入れる手はずを取りました。何時に家を出て、保育園に寄り、それから電車に飛び乗って出社するというシミュレーションもしました。ですが、産んでみたら、そんなにうまくはいかなかった。子育ては自分の計画通りにはいかないということが身をもってわかりました。それまでの日常が何もかも変わりました。
いいえ、日常ではなく、人生そのものがすっかり変わった気がしました。しかも、もう後戻りはできません。自分1人のことではなく、子どもといっしょに生きる人生を考えなくてはならないと気がつきました。時間の制約が大きく、人ひとりを育てるというずっしりと大きな責任感に、仕事を変えようかと迷い、考えあぐねていました。