有害なリーダーが組織に与える悪影響は明らか

 人格なきリーダーが組織に与える害悪は、現代経営学の観点からも科学的に証明されている。

 2022年に発表されたある学術論文(『Impact of Toxic Leadership on Employee Performance』)は、「有害なリーダーシップ」が組織に与える影響を定量的に分析した。

 有害なリーダーシップとは、部下を威圧し、自己の利益を優先し、不誠実な行動をとるような、まさに人格を欠いた管理職の振る舞いを指す。

 研究が導き出した結論は、明白だ。有害なリーダーの下で働く従業員は、仕事に対する満足度と、働く意欲が、統計的に見て明らかに低下するというのである。

 つまり、もはや感覚的な問題ではないということだ。人格なき管理職の存在は、組織の活力を確実に奪い、従業員の心に毒を流し込み、その生産性を内側から破壊していく。

 考えてみれば当然だ。自己の保身しか考えない上司のために、誰が全力を尽くそうと思うだろうか。平気でうそをつき、責任を部下に押し付けるリーダーを、誰が信頼するだろうか。

 彼らが振りかざす「目標達成」や「効率化」といった美辞麗句は、自らの地位を守るための盾に過ぎない。その盾の裏側で、働く人々の心は静かにすり減り、組織全体が活力を失っていく。

 このような管理職を放置する組織は、自らの体に毒が回るのをただ傍観しているのと同じである。彼らの存在は、もはや経営上のリスクそのものであり、破壊的な影響力は、いかなるコスト削減努力をも無に帰せしめる。

 リーダーに崇高な人格が求められることは分かった。

 しかし、美しい理念だけを掲げていても、事業を成功に導くことはできない。目の前には、不可能としか思えないような巨大な壁が、常に立ちはだかる。その壁を突破するために、リーダーは何をすべきなのか。

 核心に触れる言葉が、京セラ第二代社長・青山政次が遺した著書『心の京セラ 二十年』(非売品)の中に、静かに刻まれている。