稲盛和夫が断言する「できるリーダー」と「ダメな管理職」の決定的な違いPhoto:JIJI

管理職になってリーダーシップを発揮しなければいけない場面、部下の指導をしなければいけない場面で、どう振る舞えばいいのかわからない人も多いだろう。さまざまな処世術が世の中あふれているが、稲盛和夫がリーダーに必要なのは、何よりも人格なのだという。では「人格」を身につけることはできるのだろうか。(イトモス研究所所長 小倉健一)

部下を人前でも叱り飛ばした稲盛和夫氏、なぜ?

 部下のミスを、どう指導するか。多くの管理職が一度は頭を悩ませる場面である。

 チーム全員がそろう会議の場で厳しく指摘するのか、あるいは後で本人を個室に呼び、静かに諭すべきか。

 ちまたにあふれるビジネス書を開けば、答えは決まって後者を推奨するだろう。人前での叱責は相手の自尊心を傷つけ、モチベーションを低下させて組織の和を乱すからだ、と。静かに諭せという理屈は、いかにも合理的で、現代的で、そして優しいものだ。

 しかし、京セラ、KDDIを創業し、日本航空を再生させた経営者・稲盛和夫氏のとった行動は、その正反対であった。

 稲盛氏は、部下に問題があると判断すれば、仕事の最中であろうと、大勢の同僚がいようと、その場で雷のような大声で叱り飛ばしたという。コンプライアンスに厳しい現代だと、行動だけを切り取れば、時代錯誤なパワハラ上司と断じられても仕方がないかもしれない。

 だが、物事の本質は、表面的な行動の形ではなく、根底にある動機によって決まる。

 なぜ稲盛氏は、人前で叱ることをためらわなかったのか。体裁や部下からの一時的な評判よりも「部下を一個の立派な人間に育て上げたい」という、やけつくような愛情が勝っていたからに他ならない。

 その場限りの優しさは、部下の成長の機会を奪う無責任な怠慢である。稲盛氏の叱責は、個人の人格そのものに向けられた、真剣勝負のぶつかり稽古であった。

 実は、理想のリーダーについて稲盛氏がどう考えていたのかを知ると、稲盛氏の行動への評価も変わってくる。