人を動かすリーダーは「壮大なビジョン」より「身近な不当」に焦点を当てる
【悩んだら歴史に相談せよ!】好評を博した『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者で、歴史に精通した経営コンサルタントが、今度は舞台を世界へと広げた。新刊『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)では、チャーチル、ナポレオン、ガンディー、孔明、ダ・ヴィンチなど、世界史に名を刻む35人の言葉を手がかりに、現代のビジネスリーダーが身につけるべき「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く方法を解説。監修は、世界史研究の第一人者である東京大学・羽田 正名誉教授。最新の「グローバル・ヒストリー」の視点を踏まえ、従来の枠にとらわれないリーダー像を提示する。どのエピソードも数分で読める構成ながら、「正論が通じない相手への対応法」「部下の才能を見抜き、育てる術」「孤立したときに持つべき覚悟」など、現場で直面する課題に直結する解決策が満載。まるで歴史上の偉人たちが直接語りかけてくるかのような実用性と説得力にあふれた“リーダーのための知恵の宝庫”だ。
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多くの人の共感を生んだ
「身近な目標設定」の力
ひと握りの塩が起こした連鎖
1930年、ガンディーが主導した「塩の行進」は、当初はごく限られた小規模な抗議運動にすぎないと思われていました。
しかし、最終的には1万2000人以上の人々が自発的に参加する、インド独立運動の象徴的出来事へと発展します。なぜ、これほど多くの人が行進に加わったのでしょうか?
なぜ人々は歩き出したのか
その背景には、ガンディーのリーダーとしての重要な資質がありました。それは、「身近に感じられる目標を設定する力」と、「あらゆる人を包み込む包摂性(インクルージョン)」です。
目の前の「不当」を具体的な行動に変える力
ガンディーが設定した目標は、「塩」という極めて身近で切実なテーマでした。当時、イギリス植民地政府による塩の専売制は、貧しい人々にまで重税を課し、生命維持に必要な食料の確保を困難にしていました。
「塩をめぐる不当」は、エリート層の政治的な理念とは異なり、インドのすべての人々の日常に直接響く痛みでした。
この「身近な不当」をターゲットにしたことで、「独立」という遠大で抽象的な目標が、「自分の手で塩を作る」という、誰にでもできる具体的な行動へと翻訳されました。これが、参加への心理的なハードルを劇的に下げたのです。



