普遍的な共感を呼ぶ「象徴的行動」の設計

「塩の行進」は、単なるデモではありませんでした。ガンディー自身が先頭に立ち、24日間かけて約386kmを歩き、自ら海水を汲み上げて塩を作るという一連の行動は、劇的で象徴的なパフォーマンスとして機能しました。

「歩く」というプロセス:これは、参加者自身の決意を固め、メディアを通じて世界中にそのメッセージを届けるための時間と空間を生み出しました。

「自給自足の塩」というゴール

これは、イギリスの不当な支配に対する非暴力的な「否」を突きつける、シンプルかつ強力な視覚的メッセージとなりました。

この緻密な行動設計が、参加者を「連帯」させ、行進を歴史的なムーブメントへと昇華させたのです。

「連鎖反応」を起こすリーダーシップとは

この事例から学べるのは、大規模な変化は、小さな一歩と身近なテーマから始まるということです。

リーダーシップとは、壮大なビジョンを語ることだけではありません。人々が「自分ごと」として捉え、「自分にもできる」と感じられる、最初の一歩を明確に設計し、提供する力こそが、自発的な連鎖反応を生み出す鍵となります。

現代のプロジェクトや社会運動においても、最も弱い立場の人々にとっての切実な課題に焦点を当て、誰もが参加しやすい「具体的な行動」を示すことが、インクルーシブで力強いムーブメントを作るための本質的な戦略と言えるでしょう。

※本稿は『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。