日本では1960年代後半に、それまで「金の卵」と呼ばれていた中卒の地方出身者の都市圏への流入がピークを超えたときにこの現象が一度おきています。

 一方で直近の失われた30年の間は、女性が社会進出して夫婦共働きの世帯が増えたことと、シルバー世代が引退後も働きつづけたことで、最低賃金水準の安い非正規労働力が潤沢に供給され続ける現象が起きていました。これが少子化でまず若い新卒人材の価値が急激に上がりはじめています。そしてそれよりも年齢が上の非正規労働層についても、おそらくこの数年でルイスの転換点を迎えることで状況が逆転します。

 そうなると、企業ではそれまでのように安価な非正規労働者を採り続ける前提でのビジネスモデルが成立しなくなります。供給が減るからそうなるのですが、とはいえ実質賃金は継続的に下がっていますから、労働人口の大半は副業をしないと生活防衛ができません。即日払いが受けられるタイミーに頼る人口も、タイミーに頼る職場も、これから先、中長期トレンドとしては増加していきます。

 実はここのところタイミーの株価が下落していて、その理由として直近の成長率が鈍化していることがあるといいます。メルカリの撤退の意思決定も市況が影響している可能性はあるでしょう。しかしそれは一時的な飽和現象であって、スキマバイト市場が拡大するのは実はこれからです。

 タイミーにとってのもうひとつの追い風は、このスキマバイトビジネスでは急速にDX化が進んでいることです。伝統的なバイトビジネスでは営業チームの訪問営業による顧客開拓が重要ですが、タイミーはそれに加えてデジタル広告やSNSを活用した顧客開拓を得意としています。