そして飲食業界と違い、物流業界は大手寡占が進んでいますから、顧客を一社獲得するたびに、求人掲載数が大きく増えます。
こうしてスキマバイト市場は飛躍的に大きくなりました。競合の大手がスキマバイト市場の拡大に気づいて、後から参入しようとした2023年頃には、タイミーはそれに対抗できるぐらいの大きなベンチャー企業に育つことができたのです。
この時期、コロナ禍で日本経済全体の働き方が変わったことも重要です。コロナ禍を乗り切るにはリモートワークの導入が必須となり、リモートワークを導入するには業務の切り分けや見直しが必須となり、そうして業務を切り分けたことで人員が不足した部分をスキマバイトで埋めるという発想が成立するようになりました。
そこで現在です。タイミーを利用している企業の声を訊いてみると、もうスキマバイトなしでは業務が成り立たないと答えている企業が多数派になっています。一方の登録ワーカー側も創業当初の学生バイト中心ではなく、学生の比率は1割程度、大半は社会人で会社員の副業登録も4割近くに増えています。
マッチングされる仕事の9割は、物流、軽作業、飲食、販売が占めています。ワーカーの月平均収入は1.6万円~7.5万円ですから利用するワーカー側は完全に副業スタンスで使っていることになります。
こうして競合が参入する前に、事業者側からも、登録ワーカー側からも、なくてはならないマッチングインフラに育ったからこそ、タイミーは30%という高い手数料率をとっても売り上げは頭打ちにはならないのです。
タイミーの株価を伸ばす
“2つの追い風”の正体
ではメルカリが撤退した後のスキマバイト市場はどうなるのでしょうか?タイミーにとっては追い風がふたつあります。
ひとつは企業の求人難がこれからの数年でますます深刻になることです。経済学にルイスの転換点という言葉があります。それまで潤沢にあった労働力が一転して不足しはじめることで、賃金水準が上昇する現象です。