メルカリの場合、参入直後の一年間はこれを無料で持ちこたえてきたのです。それで一年後に課金に踏み切ったのです。この有料化のタイミングについては考慮すべきことがふたつあります。ひとつは会社として巨額投資にどれだけ長く持ちこたえることができるかどうか、そしてもうひとつは有料化する取引先が効果を認識し依存してくれているかどうかです。

 今年4月の有料化がきっかけとなって取引が伸び悩んだということは、このタイミングが早かったことを示唆しています。もちろん無料期間の1年間で巨額の投資資金が流出したでしょうから、メルカリの立場から見て持ちこたえることができるかどうかの限界に近かったのだと思います。しかし、求人をする企業の側は、「有料ならメルカリを使う必要はないよ」と判断したのでしょう。

スキマバイトを定着させた
タイミーが目をつけた業界

 ではメルカリよりもずっと小さいベンチャー企業として始まったタイミーは、この問題をどう乗り切ったのでしょうか?

 その答えは簡単です。タイミーが2018年にサービスを始めた当初は、スキマバイト市場など存在していなかったのです。

 ベンチャー時代のタイミーは学生の隙間時間と、飲食店のスキマバイトニーズをマッチングさせる、小さなスマホアプリから始まっています。これは当時のアルバイト求人市場の中ではとても小さいニッチ市場だったため大手求人情報誌・サイトの各社が参入するほどの大きさではありませんでした。大手の参入にびくびくすることはなかったのです。

 タイミーにしてみると運が悪いことにサービスが軌道に乗り始めた頃に、世界をコロナ禍が襲います。主力取引先の飲食店がどこもサービス縮小に動く中で、タイミーは非常に厳しい局面を迎えます。

 タイミーの転機はこのタイミングで物流業界というスキマバイトの巨大なマーケットを発見したことでしょう。物流はそもそも繁忙期と閑散期の差が大きいビジネスです。一方で顧客ニーズを満たすためには繁忙期に合わせた人数のシフトが必要でした。ところがスキマバイトが発明されたことで、物流業界から見ればシフトの前提を中間期に合わせて繁忙時間だけスキマバイトで陣容を増やすことができるようになります。