みなの前では気丈に振る舞うも
出撃前夜になると葛藤が溢れた
葉桜隊を護衛していた角田さんは、10月30日、フィリピンのセブ基地で特攻を指揮していた中島正中佐から、その任務を命じられていた。
《特攻隊員たちは、本当に明るい朗らかな連中でしたね。お昼ちょっと前だったので弁当をもらったんですが、「飛行機に乗るには面倒だ、食っちゃって行こうや」なんて言って。指揮所の前で。
どういうわけか、当時ほかにはなかった、いなり寿司やぼた餅の缶詰があったんですよね。それを開けてもらって、サイダー1本もらって、それを昼飯にして食べたんですが。みんな喜んで、本当に遠足に行った子どもたちのように、わいわい騒ぎながら食べてましたね。
20歳前の少年たちでしたけど、これが今から突っ込んでいくなんてことは、とても考えられないような明るさでした。なかには、「俺ぁ、とてもこれノドを通らないよ」なんて言って、いなり寿司を見送りに来た青年に渡して、サイダーだけ飲んで行った人もいましたけど、多くの人は本当に喜んだように食べて出発しました。》
どういうわけか、当時ほかにはなかった、いなり寿司やぼた餅の缶詰があったんですよね。それを開けてもらって、サイダー1本もらって、それを昼飯にして食べたんですが。みんな喜んで、本当に遠足に行った子どもたちのように、わいわい騒ぎながら食べてましたね。
20歳前の少年たちでしたけど、これが今から突っ込んでいくなんてことは、とても考えられないような明るさでした。なかには、「俺ぁ、とてもこれノドを通らないよ」なんて言って、いなり寿司を見送りに来た青年に渡して、サイダーだけ飲んで行った人もいましたけど、多くの人は本当に喜んだように食べて出発しました。》
だが葉桜隊の突入を上空から見届けた日の晩、出撃を待つ若い特攻隊員の宿舎を訪ねた角田さんは、彼らが昼間に飛行場で見せた顔とは違う「夜の顔」を目の当たりにする。
《目をギラギラさせて、本当に見ただけで鬼気迫るという感じの部屋だったですね。昔の部下が部屋の入り口で番をしていたので聞いたところ、今日朗らかに行った連中も、夕べはやはりこういうふうにしていたんだと。目をつぶると、いろいろな雑念が出てきて眠れなくなるんだって。
だから本当に眠くなるまでみんなあぐらをかいて、目をギラギラさせて起きているんですね。
でも、夜が明けて飛行場に行く時は、そんな姿は全然残さずにみんな喜んで朗らかになって飛行場に出ていくんですよね。悩んでいる姿、嫌がっている姿は他人には一切見られたくないという一種の自尊心と言いますか、攻撃精神と言いますか、本当に特別な気持ちがあったろうと思いますね。》
だから本当に眠くなるまでみんなあぐらをかいて、目をギラギラさせて起きているんですね。
でも、夜が明けて飛行場に行く時は、そんな姿は全然残さずにみんな喜んで朗らかになって飛行場に出ていくんですよね。悩んでいる姿、嫌がっている姿は他人には一切見られたくないという一種の自尊心と言いますか、攻撃精神と言いますか、本当に特別な気持ちがあったろうと思いますね。》
『“一億特攻”への道 特攻隊員4000人 生と死の記録』(大島隆之、文藝春秋)







