「殴り合いにいきました」
後半に何が変わったのか

 日本の大敗すら予感させる試合展開だった。ブラジル自慢のパス回しに翻弄された挙げ句に前半26分にあっさりと先制されると、6分後の32分にも追加点を奪われた。ボランチの鎌田大地(クリスタル・パレス)は「やられた、という感じはそんなになかったけど……」と前半をこう振り返った。

「自分たちの人数が多すぎたというか、本当にもったいない失点の仕方でした」

 人数が多すぎた、イコール、日本の重心が自陣に近い位置にあった状況を意味する。受け身に回っていたと言い換えても意味は通じる。試合展開が180度変わったターニングポイントはハーフタイム。ロッカールームでのやり取りを堂安律(アイントラハト・フランクフルト)はこう振り返る。

「チーム的にも若いし、まだまだ経験の浅い選手が多いなかで『決してネガティブにならず、ポジティブにトライしていこう』と、拓実くんと僕が先頭に立ってロッカールームで声をかけていました」

 そのうえでピッチに立つ選手はそのままで、後半の戦い方だけが改められた。堂安が続ける。

「森保さんが外から見ていた感覚に対して、選手のみんなはどう感じているのか。そういった意見も聞きながら、みんなで擦り合わせたうえで『これでいこう』という決断をチーム内でまとめられた」

 森保ジャパンは実際に何をどのように変えたのか。堂安は「後半はブラジルを相手に殴り合いにいきました」と独特の言い回しを介して胸を張った。鎌田がもう少し具体的に説明してくれた。

「監督からは『後ろのままにするか、それとも前からいくか』という話があって、そのなかで『前からはめていこう』と。後半はリスクを冒した守備のもとで、対人の部分で相手を上回れたと思う」

 前半で自陣に余り気味だった人数を、敵陣でボールをもつブラジルの選手に割いてプレッシャーを与え続けた。成果は後半7分にさっそく表れる。相手ゴール前で堂安、鎌田、FW上田綺世(フェイエノールト)が連動してプレスをかけて相手のミスを誘発。南野が反撃の狼煙をあげるゴールを決めた。