
サッカー日本代表が歴史的な勝利をあげて世界を驚かせた。14日に東京スタジアムで行われた国際親善試合で、ワールドカップで史上最多の5度の優勝を誇るブラジル代表から通算14度目の対戦で初勝利をもぎ取った。しかも2点をリードされた後半に、怒濤の3連続ゴールをゲット。痛快無比な大逆転劇を成就させた要因と、真っ向勝負の末に手にした白星の価値を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
サッカー王国ブラジルに日本が初勝利
「相手が完全に焦っていた」
ブラジルのリオデジャネイロ州の有力日刊紙「オ・グローボ」が記事のなかで記した一文に、ワールドカップで史上最多の5度の優勝を誇るサッカー王国が受けた衝撃の大きさが凝縮されていた。
「前半に2点をリードした展開から逆転負けを喫したのは、ブラジル代表史上で初の屈辱となった」
しかも敗れた相手はスペイン代表を筆頭とするヨーロッパ勢でも、ましてや南米大陸の宿敵アルゼンチン代表でもない。過去の対戦成績が11勝2分け。総得点35に対して総失点はわずか5と、攻守両面で圧倒していたアジアの日本に、たとえ国際親善試合であっても敗北は想定していなかったのだろう。
歴史を振り返れば、ブラジルに冷や汗をかかせた一戦もあった。たとえば2005年6月にドイツで開催されたコンフェデレーションズカップ。各大陸の王者が一堂に会する公式大会のグループリーグ最終戦で、ジーコ監督に率いられる日本は2度のリードを奪われながら2-2で引き分けている。
当時の日本のキャプテンで、現在は日本サッカー協会(JFA)会長を務める宮本恒靖氏は言う。
「あのときも試合中に若干の空気の揺れといったものをブラジル代表から感じたけれども、今回は相手が完全に焦っていた。ブラジルの選手たちから『あれ、こんなわけがない』といった様子が伝わってきたのも、日本代表がブラジルをそのようにさせる試合をできたのも、ともに初めてでした」