「カタールでのワールドカップに似ていて、早い時間帯にゴールできてイケイケになれました」
鎌田の言葉とともに、2022年11月のワールドカップ・カタール大会の記憶が蘇ってくる。優勝経験のあるドイツ、スペイン両代表と対戦したグループリーグ。1点をリードされて迎えた後半に怒とうの逆転劇を演じて強豪国を撃破し、ベスト16へ進出して世界を驚かせた。鎌田が続ける。
「いつも思っていることですけど、日本の攻撃陣にはタレントが数多くそろっている。もちろん攻撃力はあると思っていますけど、実際には本当にいい守備をしないといい攻撃はできない。今日に関しては後半の守備がよくなったからこそ、攻撃的な部分にもつながっていった。2点目が決まって同点になったときには、チーム全体が『これはもうもう勝つしかない』という感じになっていました」
「負けは簡単に受け入れられない」
ブラジルの“痛恨のミス”とは
同点としてから10分後の後半17分には、堂安とのコンビネーションから右サイドを突破したMF伊東純也(ヘンク)のクロスをMF中村敬斗(スタッド・ランス)がボレーで叩き込んで追いつく。そして同26分には左コーナーキックに上田が豪快なヘディングを見舞ってついに逆転に成功した。
ブラジルの選手たちも決して超人ではない。たとえば自軍ゴール前で南野にパスを送ってしまい、反撃のゴールをお膳立てしたDFファブリシオ・ブルーノは中村のシュートに対してもクリアミスを犯している。失意のどん底に突き落とされたからか。取材エリアでは思わず涙ぐむ姿を見せていたほどだ。
レアル・マドリード(スペイン)をはじめとするヨーロッパの強豪クラブの監督を歴任。5月からブラジル代表史上初の外国人指揮官に就いたイタリア出身のカルロ・アンチェロッティ監督が言う。
「ブルーノ選手のミスでチームは明らかにコントロールを失った。メンタル面でチーム全体が調子を落としたのは、この試合における最大のミスだった。こういったミスはこの段階でほうが、ワールドカップ本番で犯すよりもはるかにいい。ただ、負けというものは誰もが簡単に受け入れられるものではない」