どれほど愛しても、“大切にしてくれない人”は変わらない。新刊『人生は期待ゼロがうまくいく』も話題となっているキム・ダスル氏のベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)が教えるのは、自分を傷つける関係から離れる勇気だ。日韓累計44万部を突破した本書の発売を記念して、ライターの有山千春氏に、「恋人との向き合い方」についてご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

【実録ルポ】「私がさくらちゃんだよ」→出会い系サイトの女の子と会ったら腰を抜かした怖すぎる理由Photo: Adobe Stock

彼氏好みの「さくらちゃん」

 20代の頃に同棲していた恋人が、出会い系サイト(現・出会いアプリ)に登録していたのをひょんなことから知ってしまった。

 付き合って3ヶ月ほどを境に、何度も疑惑をもたらす彼の言動に翻弄され疲弊して、寝ても覚めても彼の疑惑を明るみにすることばかりを考える日々のなかで、知ってしまったのだ。

 これはもう、筆者も同じサイトに登録するしかないだろう。

 彼好みのプロフィールをこしらえ、名前は「さくら」にした。

 無事に彼とマッチングし、さくらちゃんが彼にメールを送ると、筆者の「今日の夜ごはんどうする?」というメールは4時間ほど無視しているくせに、さくらちゃんのメールには1分後に返信してきた。

 14畳の1LDKで、筆者がすぐそこにいるのに、さくらちゃんに「いつ会えるかな?」とメールを寄越した。

 さくらちゃんと彼が会う日は決まった。1週間後の土曜日、渋谷に13時。

 期待に胸を膨らませて待ち合わせ場所に立つ彼を想像するだけで、私が目の前に現れたらあいつどんな顔するだろうと、筆者の期待も膨らんだ。

 と同時に、毎日、嘔吐感が襲った。眠れなくなった。彼のすべての言動に疑いの目を向け、常に一触即発の状態になった。

 友達に相談すると、総じてみんな「あなたはそんなふうに扱われるような人間じゃない。いますぐ別れよう」と説得するように言ってくれた。当時の筆者は「でも」「だって」と繰り返し、踏ん切りをつけられずにいた。

 いま、20代の女性にこの話を披露すると、絶句してこう言う。

「そんなふうに雑に扱われるなんて許せない。なんで自分を尊重してくれない人と付き合うんですか?」

 彼女たちはみんな、自分自身を大切に扱い、そして相手から大切に扱われるように振舞っている。だから筆者のあがきが理解できないようだった。

「私がさくらちゃんだよ」

『人生は「気分」が10割』にも、はっきりとこう書かれている。

「『大切にしてくれない恋人』からは離れる」

 著者のキム・ダスル氏によると、「大切にしてくれない」とは、

 普段は既読にもならず返事すらろくにしない相手が、仕事の電話やメールに即対応するのを見たとき。
(中略)
 連絡はよこさないのにゲームには熱中する。
 メッセージに返信しないのにSNSはオンライン中になっている。
 電話する時間がないと言いつつ、テレビや動画を見る時間はある。
 会う時間がないと言いながら、他の人とは会っている……。
――『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』より

 筆者はこれ以上の仕打ちを受けているのだが……、「付き合い方の問題というより、自分自身の、人としてのプライドに関わる問題」だとつづる。

 関係を再構築しようにも、大切にしてくれない相手には、どんなに尽くしても何を言っても、大切にしてくれることはないのだ。

 ちなみに筆者はその後、会う日まで我慢ができず、同棲する部屋でこう言った。

「私がさくらちゃんだよ」

 人生で初めて、人が腰を抜かす瞬間(ゆっくりと、波動のような流線型で、床に尻が落ちる)を見ることができたので、よしとした。

(本稿は、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』の発売を記念したオリジナル記事です)

有山千春(ありやま・ちはる)
メーカー広報、出版社編集者を経て2012年よりフリーライターに。主に週刊誌やWEBメディアで取材記事やインタビュー記事を執筆。昨年より高田馬場の老舗バーにてお手伝い中。