「私ばかり誘っている気がする」――友人関係での違和感の正体は、心の報酬バランスの崩れだった。最新刊『人生は期待ゼロがうまくいく』も話題となっているキム・ダスル氏のベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(岡崎暢子訳)の日韓累計44万部突破を記念した本記事では、ライターの有山千春氏に、「理想的な人間関係」についてご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

「今度お茶でもしようよ」がいつまでたっても実現しない人の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

「自分が誘ってばかり」の
不平等な関係

 学生時代から「私たち、本当に仲が良いよね。あなたと会うときだけ呼吸ができる気がする」と言ってくれる女友達Aがいた。

 たしかに彼女と会うと、昼間から一緒にいても翌日の朝まで寝ずにおしゃべりが尽きないし、お互いの考えていることが手に取るようにわかるから、問答に一切のストレスを感じなかった。

 が、社会人になり、結婚して出産し、仕事上の立場が変化し……と、お互いにライフステージが変わり、それに比例して関わる人間が増えていくと、手放しに「仲良しだよね」と言い合うことに違和感を抱くようになった。

 筆者ばかりが会う約束を取り付けていることに気づいたのは、そうではない友達との関わりが増えてきたからだった。

 彼女に疎まれているわけではないし、ましてやフェードアウトを試みられているわけではないのはわかっているが、「なんだかなあ」と思い始めると、止まらなかった。

 そんななか、いつも食事に誘ってくれるし、こちらからも誘う友達Bの一言が、決定打となった。

 友達Bと食事をした翌週、前職場の先輩と海外旅行に行くというので「友達がたくさんいていいね」と漏らしたときだった。

「私、ちゃんと誘うようにしているから。それに、声をかけてくれたら次は私から誘ったり、友達でいたい人は枯らさないようにしているんだよね」

 その言葉が忘れられず、以降、筆者も受動と能動のバランスを意識するようになった。

「声をかけてくれたあなたと仲良くしたいから、私も声をかける」を、意識的に実践するようになったのだ。

 するとくだんの女友達Aとのアンバランスな関係性が浮き彫りになり、結果「そろそろ会いたいよね」と言い合うだけの空虚なやりとりを続けるだけの仲となった。

 連絡を取らなくなってから2年が過ぎようとしている。

「尽くすだけ」の関係は続かない

 韓国の作家、キム・ダスル氏が「最高の一日が一生続く106の習慣」をつづったベストセラー『人生は「気分」が10割』には、筆者の「なんだかなあ」の正体が掲載されていた。

 相手に尽くせば尽くした分だけ、傷つくときはダメージも深くなる。
 だからこそ人に親切にするときは見返りなんか期待しないに限る。
 だけどそれって結構難しい。
 なぜなら、人間には見返りを求める心理が本能的に備わっているからだ。
――『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』より

 なんでも、見返りを求めてしまうのは感情の話ではなく、「脳にそういう報酬系の回路が存在している」(同書より)というのだ。

 そのうえ、「私ばかりが誘っている」とよぎったことが子どもじみていて恥ずかしくもあったが、同書は「生物学的に見ても報酬系回路に逆らっているようなものだから、当然、苦しく、つらくなる」と、受け止めてくれる。

 そしてこう結ぶ。

 結局、脳のためを思うと、きちんと返してくれる人に対してだけ尽くしたほうがストレスが少ないのだ。
 返してくれる人は、誰に言われずとも相手に報いようと動くもの。
――『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』より

 誘ってくれる友達を、こちらからも誘う。

 それはごく当たり前のようでいて、お互いに誠意を向けあっているからこそできることなのだと気づくことができたのだった。

(本稿は、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』の発売を記念したオリジナル記事です)

有山千春(ありやま・ちはる)
メーカー広報、出版社編集者を経て2012年よりフリーライターに。主に週刊誌やWEBメディアで取材記事やインタビュー記事を執筆。昨年より高田馬場の老舗バーにてお手伝い中。