客はうっとりでも…「雪の東京ディズニー」が従業員に“地獄”でしかないワケPhoto:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。楽しいこと、ハッピーなことばかりの仕事などない。それはほかのすべての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ)の一部を抜粋・編集したものです

某月某日 肉体労働者
暑い日も、寒い日も

 カストーディアルキャスト*は「歩くコンシェルジュ」として、どんなに悪天候の日でもオンステージ*をひたすら歩きまわって清掃業務やゲストの案内にいそしむ。雪が降ろうが嵐が来ようが、仕事からは逃げられない。

 仕事は、オンステージを清掃する業務とレストルーム(トイレ)を清掃する業務の2種類に分けられる。春や秋の時期、晴れて気持ちの良い日はオンステージ担当がいい。反対に猛暑や極寒、そして雨や雪の日、レストルーム担当は「勝ち組」と呼ばれてみんなからうらやましがられる。

 真夏の炎天下、オンステージはキビシイ。地面からの照り返しが強烈である。そのため、実際の気温よりも体感で5℃は高く感じられる。暑い日にはポップコーンが売れないかわりにアイスクリームやアイスキャンディが飛ぶように売れる。これがカストーディアルキャスト泣かせなのである。

 溶けたアイスが地面に垂れてシミになる。放置はできないので、モップを持ってきて拭く。そうしているあいだにも、また別のところでアイスが垂れてシミができる。さらに自販機前では、噴き出したコーラで地面を汚しているゲストがいる。ここにもモップを持って駆けつける。

 私は汗っかきなので、真夏は掃除中、汗が噴き出してきて粒になってメガネを濡らす。シャツを濡らす。ひどいときにはズボンまで濡れる。いつゲストに話しかけられるかわからないため、身なりは整えておかなければならず、大量の汗は随時、ペーパータオル*で拭いていた。

 ところが、ある日の朝礼でSV*から「ペーパータオルは業務用の使用に限り、汗拭きに使わないように」という禁止令が出た。しかし、ハンカチではすぐにびしょ濡れになり、役に立たなくなる。タオルを首からかけて作業をするわけにもいかない。やはり夏の日のカストーディアル業務にはペーパータオルが必須なのだ。SVのケチな禁止令を無視して私は大量の汗をペーパータオルで拭ぬぐい続ける*。

 冬は冬でキビシイ。真冬だと数時間立ちっぱなしでいるため、寒さが身に染みてくる。寒い日はマフラー、手袋*(軍手)、厚手のコートなどを着用してもいいのだが、コートは厚くて動きづらいので着ているキャストは少数である。