仕事において、「チームで仕事をする」ことは多いもの。一方で他部署や他社など、価値観や背景の違う相手とのすれ違いや衝突にモヤモヤすることも……。
「他者と協力して結果を出せる人たちには共通する行動法則があります」
そう語るのは、組織開発の専門家である沢渡あまねさんと、デザイン経営の研究者・実務家である下總良則さん。そのふたりが、400以上の組織やチームを見てきて気づいた「誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること」をまとめた書籍『チームプレーの天才』が発売。これまで言語化されてこなかった「チームプレー」のコツを、具体的な93の技術として紹介し、話題になっています。この記事では、同書から内容の一部を紹介します。
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これから目指したい「チームプレー3.0」とは
共に創ると書いて、共創。
この言葉をビジョンやスローガンに掲げる企業が増えてきました。「共創企業」を謳う大企業やスタートアップ、「事業共創推進室」「地域共創部」などを立ち上げる企業や行政機関もあります。
「他社(取引先)、他部署、他チームなど組織の外の人たち、あるいは他業界や他地域、他の専門領域を有する人たちとフラットな関係を構築し、「共創」関係で共に事業運営や課題解決をする。」
「権力やお金の力のみで相手を従えるのではなく、理念やストーリーへの共感を得つつ、各々の立場や利害関係を尊重し、内発的な動機によって活動を共にする(ただし、お金のやり取りは適正に発生する前提)。」
「対等な関係が前提で、指示命令や取引ではなくリスペクトでものごとが進む。」
「感動・共感・内発的動機が鍵となり、相手と新たな景色を創りあげていく。」
それが、「共創」が体現された形です。
従来の「立場や権力の力で相手を動かす関係」をチームプレー1.0、「お金の力で相手を動かす関係」をチームプレー2.0とすれば、「共創」の関係はチームプレー3.0と位置付けられるでしょう。
「競争」ばかりしてきたから、「共創」できない組織
一方で、「フラットな関係構築」「共創」などと言いつつ、自組織の事情や都合だけを一方的に押し付けて、結局は相手を自分たちの言いなりにしていないでしょうか。
実際のところ、共創を企業理念に謳いつつ、社員や社外の協力者を遠ざける残念な企業もあり、私は「共創に謝れ!」と言いたくなることもあります。
私は全国の企業や地域の、組織開発や共創の場創りに取り組んでいますが、次のような本音や悩みを耳打ちされることがあります。
「あの会社(地域の大企業)は共創を掲げながらも、なんだかんだ上から目線。申し訳ないが、ご一緒できそうにない」
「二言目には“提案してくれ”“安くやってくれ”“タダでやってくれ”などとふんぞり返る。だったら、ものわかりの良い他の顧客をあたったほうが経営上も精神衛生上も良い」
とはいえ、無理もありません。
日本のこれまでの資本主義社会は「内製」または系列企業で固めたヒエラルキー構造と「競争」を前提としてきたと言っても過言ではありません。ゆえに他者とフラットな関係を構築し、共創関係でものごとを進める経験が乏しい。
その結果、「上司の命令だから口ごたえするな」「お金を払っているのだから言うことを聞け」といった旧来の関係から脱却できず、一方的に要求を伝えるばかりで相手のことを考慮しない。そのような「癖」が出てしまいます。指示される方も「下請け癖」がついてしまう。



