「がんばっているのに結果が出ない」…ドラッカー的対処法

吉田:また、起業する女性の会話では、こんな言葉をよく耳にします。

「あの人、めっちゃ憧れる。ああいうカラーセラピストになりたい」
「いいよねー。いつかはおうちサロンを開業するのが私の夢なの」
「自己実現のためにがんばらなくっちゃ!」
「夢を叶えるっていいよね。コンプレックスだったことも乗り越えたいし」

すでに起業してキラキラと輝き、SNSで日々写真をアップしている人たちを見て、「いつか私も夢を叶えたい」と憧れて努力している女性を、私もたくさん知っています。

そのがんばる姿はとてもすてきなのですが、彼女たちがドラッカー・マネジメントを知ったら、よりよい展開になるのではないかと感じることも多いのです。

たとえば、先ほどの会話には、「起業=自己実現」「夢を叶える」「コンプレックスの克服」といった“自分事”の枠の中でビジョンを形成してしまう危うさがあります。

ドラッカーは『創造する経営者』の中でこう言っています。

「事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである」

自社が保有している強みである卓越した知識という資源を投入し、「こんなのが欲しかった!」と顧客が価値を感じて購入する、つまり経済価値に転換するプロセスが事業であるといっています。

そのためには、事業が果たすミッションはそもそも何であり、顧客は誰で、顧客にとっての価値はどのようなことで、なにをもって成果とし、具体的にどう計画を立てていくのかを考える必要があります。

そのためにマーケティングやイノベーションを行い、状況に応じて変化できるよう常に事業を分析し、強みを磨いていくことが求められます。

「自分の夢を叶える」「なりたい自分になる」という視点から、事業という視点で社会の中でどう役割を果たしていくかという視点への転換が必要になります。

もちろん、夢や理想は大切な出発点です。それは、自分が持つ知識や感性の特有な輝きから生まれた動機でもあります。

けれど、「がんばっているのに結果が出ない」「自信が持てない」「どう進めばいいかわからない」――そんな迷いを抱えている女性起業家が多いのも事実です。

女性ならではの感性があるからこそ、ドラッカーのマネジメントから得られるヒントはたくさんあるのです