人を狙って街にやってくるアーバンベアをどう減らすのか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA
秋田で自衛隊派遣も検討されるなど、過去最悪ペースで増加する「クマ被害」。人間を恐れず人里を襲う「アーバンベア」の恐怖が日本中を覆っています。なぜクマはこれほど凶暴化し、被害が増え続けるのか?「クマは全て駆除すべき」という議論が高まる中、「本当の原因は別にある」と筆者は指摘します。クマを人里に追いやっている“ある動物”の存在とは。犠牲者を減らす、驚きの解決策に迫ります。(ノンフィクションライター 窪田順生)
「人間vsクマ」の戦いは
新たなステージへ
いよいよ「怪獣退治」のようなムードになってきた。
秋田県内でのクマによる人身被害が50人を超えたことを受けて、鈴木健太県知事が自衛隊派遣を要請したところ、小泉進次郎防衛大臣が派遣の方向で調整をしているというのだ。
要請内容としては、主にワナの設置や見回りなどの「後方支援」。「そりゃそうだろ、自衛隊の仕事はあくまで国防であって、クマの駆除なんてやらせたら気の毒だ」という人もいるだろうが、過去には自衛隊が実際にクマと「対決」した記録もある。
1962年、北海道の標津町内の集落が深刻なクマ被害に見舞われた際、やはり派遣要請があり陸上自衛隊の第5師団27名の隊員が現地に向かった。パトロール中などでヒグマに遭遇した場合、発砲してよいという許可があったという。
1971年、北海道芽室町で自衛隊の航空機が遭難して捜索をしていた際に、ヒグマと遭遇した自衛隊が小銃によって射殺している。
ということは、今回も住民の警護やワナの設置をしている際に、陸上自衛隊とクマが「交戦」する可能性もゼロではないということだ。このような前例ができれば他自治体からの要請も増えるし、法整備も進んでいく。「人間vsクマ」の戦いは、ここにきて新たなステージに入ったのである。
そう聞くと「だったら自衛隊の装備や組織力を使って、殺すのではなく捕獲して山に返してやればいいだろ」という心優しい方もいらっしゃるだろう。
小さな子グマと母グマが連れ添っている映像とともに「猟友会によって駆除されました」というニュースが流れるのを聞いて、心が痛まない人はいないはずだ。しかし、犠牲者をこれ以上出さないためには「駆除」はやむを得ない。







