ディズニーで記念撮影をする客写真はイメージです Photo:Feature China/gettyimages

東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。楽しいこと、ハッピーなことばかりの仕事などない。それはほかのすべての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです 

某月某日 誰が使ってもいいけれど
レストルームのマナー

 東京ディズニーランドは園内、全面禁煙となっている。喫煙所がもうけられているものの、園内に3カ所しかないため、我慢のできない不埒(ふらち)な人間がレストルームでの一服をくわだてることもある。

 いつもどおり、清掃で巡回していると、レストルームの個室から煙があがっている。煙とニオイでタバコだと感知した私は個室の前でなかの人が出てくるのを待った。

 数分すると水洗トイレを流す音がして、なかから30代と思われる男性が出てきた。

「恐れ入りますが、喫煙は喫煙所でお願いいたします」

 少し強めに注意する。

「あっ、すみません。やっぱりダメですよね」決まりが悪そうに頭を下げる。

 あくまでもお願いごとなので、注意といってもこの程度が限界である。これまで数回注意したが、たいていゲストは素直にすみませんと謝ってくれる。

 レストルームによっては通常のトイレ以外に多機能レストルーム*が併設されている。

 混み合う日には一部の多機能レストルームに専属のキャストが配置される。車椅子を利用したり、体が不自由なゲストが優先的に問題なく利用できるように案内するのが役割である。