この男性はシゲルさんの“魔力”に当てられ、衝動的に弟子入りを志願しました。この熱意は、投資を学ぶ上で強力なエンジンになります。

しかし、このエピソードは、個人投資家が陥りやすい2つの重要な「落とし穴」を示唆しています。

「すごい人」への過度な依存

物語の男性は、シゲルさんの魔力に惹かれています。一方、投資の世界には、SNSやセミナーなどで圧倒的な実績やカリスマ性を持つ「すごい人(メンター)」が存在します。

そうした人物から学ぶこと自体は有益ですが、「この人についていけば大丈夫」という思考停止に陥るのは非常に危険です。投資の最終的な判断と責任は、他の誰でもない自分自身が負うものです。

メンターの言葉を鵜呑みにするのではなく、その教えが本当に合理的か、自分の投資スタイルやリスク許容度に合っているかを冷静に分析する「批判的な目」を常に持つことが重要です。

最も身近な「リスク管理」

物語の男性の熱意とは裏腹に、妻の「実咲」は「怪しい」「ヘンな壺」と冷ややかな反応を示します。これは、多くの投資家が直面する現実的な壁です。

投資は、自分一人の問題ではなく、家族の生活や資産にも直結します。男性のように説明を後回しにしたり、熱意だけで押し切ろうとしたりすると、最も大切な家族との信頼関係を失いかねません。

なぜ投資を学ぶのか、どのようなリスクがあるのか、どれくらいの資金で行うのか。これらを誠実に説明し、家族(最も身近なステークホルダー)の理解と協力を得ることは、市場でリスクを取る以前の、最も重要な「リスク管理」の一つと言えるでしょう。

「不可解な衝動」で始めたとしても、それを継続的な「学び」に変えるためには、冷静な分析と周囲への誠実な対話が不可欠です。

※本稿は、『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。