シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。

【日本を襲う未曾有の危機】大災害と地政学リスクは同時にやってくるPhoto: Adobe Stock

損失規模は数百兆円に?

 過去にも、多くの大災害が日本を襲った。しかし、今回はそのインパクトが違う。残念ながら、2040年までに我が母国は、壊滅的な災害に見舞われる可能性がある。日本は、南海トラフ地震と首都直下地震、富士山噴火という3つの災害が、同時に起こり得るサイクルに入った。

 ・南海トラフ地震
 ・首都直下地震
 ・富士山噴火

 これらは周期的に必ず起こるが、今回の周期は3つすべてが過去最大にエネルギーやマグマが溜まった状態で起こるのだ。数十年以内に経済損失規模で、3つ合わせて数百兆円超のものが来る可能性があるのだ。日本の年間GDPがそのまま吹き飛ぶ計算だ。

 現代において災害のダメージが過去より深刻になっている理由は、以下の3つだ。

 ・我々は先進的だが、脆弱なテクノロジーのおかげで人類史上最も快適に生きている
 ・都市化が進み、多くの人類が巨大都市に生きている
 ・サプライチェーンがグローバルに広がり、一か所の災害は全地球的にダメージを与える

 我々人類は、過去にも定期的に自然災害の犠牲になってきた。ただ、今の我々は、電力やガス、上下水道、インターネット、ワクチン、エアコン、シャワー付きトイレ等々のおかげで、非常に快適に生きている。“人間らしい生活”の定義レベルが、過去最高なのである。

 しかしながら、これから起こる大災害を前にして、これらのテクノロジーは遮断され、我々の快適さが一気に奪われる可能性がある。そして現代社会やビジネスは、これらのテクノロジーが遮断されれば、多くは機能しなくなる。

 人類は、有利な機会を求めて世界中で都市に集まっている。ビジネス、教育、医療、エンターテインメントなどが都市に多く誕生し、それを求めて人が集まる。そうなると当然、人々は高層の集合住宅に住んだり、大規模オフィスで働いたりすることになり、一か所で同時に多くの人が災害に遭うリスクが高まる。

 先ほどの南海トラフ地震、首都直下地震、富士山噴火のサイクルが重なって呼応し合うように起こると、被災者の数は、前例のない規模に達するおそれがある。とんでもないタイミングに我々は生まれてしまっているのだ。

3つの災害のリスク

 南海トラフ地震は海底プレート型なので、津波が建物や人の命を奪う。あなたがお住まいの場所の海抜高度と海や川からの距離、津波の到達時間を確認してほしい。津波が到達するまでの逃げる時間は、どれくらいだろうか。

 一方の首都直下地震は、陸地の活断層による地震なので、逃げる時間はほとんどない。建物の倒壊による圧死が増えるだろう。たとえ自身の住まいが耐震構造になっていても、いつ地震が起こるかによって関係なくなってしまう。地下鉄に乗っているときや古い商店街を歩いているときに起こることもある。

 富士山噴火のマグマは、過去最大噴火の倍くらいのマグマになる可能性もあるので、火山灰で東京の都市機能や電気やインターネットは、一か月間くらい止まるかもしれない。東海道新幹線はもちろん、関東エリアの空港は使えなくなるので、日本が東西に分断される可能性もある。

 とにかく、助けに来るべき人たちも被災者になるので、誰も助けに来られない。ほとんど我々全員が、被災者ということになる。

 この3つの災害は、ほぼ必ず数十年以内に来る可能性がある。まだ地震や火山噴火の予知は天気予報のレベルまでいかず、いつ来るかも台風のようにはわからない。地球のスケールは雄大なので、年単位で誤差はある。

 しかし、もう完全にサイクルに入っているので避けられない。とにかくまずは生き残ることを最優先に考えることだ。

大地震は、大きな政治的変化にもつながる

 南海トラフ地震が襲ってきた後に、首都直下地震が来て、続いて富士山噴火が続く、という連鎖型の発生もあり得る。破壊されたうえにさらに破壊してくる。

 これでもか、これでもかと、株も円も下がり、世界経済危機にもなるだろう。多くの土地は暴落どころか、姿を消すだろう。

 大地震は、大きな政治的変化にもつながっていく。

 18世紀に起きた「リスボン地震」では、カソリックの祝日に大地震と大津波が、敬虔な信者ばかりのポルトガルの首都リスボンを襲った。敬虔な信者は、神の御業に衝撃を受け、それは啓蒙主義が欧州に広がるきっかけになった。

 毛沢東政権下で起こった「唐山地震」は、科学を軽視して文化大革命を指揮した毛沢東氏の失脚と鄧小平氏が台頭するきっかけとなった。

 大政奉還の前に起きた「安政の大地震」は、幕府の財政を直撃し、それが大政奉還と明治維新を呼んだといわれる。

 次に起こる大震災も、それが原因で政治的大変化を日本に引き起こすかもしれない。同時に手強い隣国は、救援を装い我が国に何かしてくるかもしれない。

 多分、大震災で自衛隊も警察も被災しながらも救援に回ることになり、国防は機能していないだろう。この艱難辛苦こそが、真の日本の転換点になることが予想される。

 日本人の生存本能を覚醒させ、日本の復活の始まりとなるか。それとも日本は滅びていくのか。

 私は、覚醒した今の子供たちが、たくましく海外の力も取り入れ、ゼロから創造しながら、まったく違う形の新しい日本を作り上げていくと予想する。

 既得権益もようやく破壊し尽くされ、再び創造的破壊が日本に起こり、新しい担い手により日本は復活するのではないだろうか。

(本稿は君はなぜ学ばないのか?の一部を抜粋・編集したものです)

田村耕太郎(たむら・こうたろう)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。