「人に使われるくらいなら…」雨清水家を“どん底”に導いた「タエ(北川景子)の潔さ」は本当に美学なのか?〈ばけばけ第30回〉『ばけばけ』第30回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第30回(2025年11月7日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

人気がないことを気にするヘブン

 三之丞(板垣李光人)とトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が再会。気まずいふたり。トキは「おばさまを見ました」と切り出して「話してごしなさい」と事情を聞こうとするが、「母を待たせている」から明日とかわされてしまう。

「ほんとに会えますか」と疑うと「私だって聞いてほしいんだ」と三之丞の本音が漏れる。

 そこでタイトルバック。明けると、ヘブン(トミー・バストウ)が引っ越しをしている。錦織(吉沢亮)とふたりで大八車を引っ張っている。

 梶谷(岩崎う大)が引っ越しの様子を取材に来た。「どなたですか」とヘブンが聞くが、すでに花田旅館で会っていたと思うが……。まあ、紛れていたから認識していないということだろう。

 手伝わせられる梶谷。だが、引っ越し先は旅館の目と鼻の先だった。

 ここがなかなか広くすてきな住まいで、縁側に文机を配置し、ヘブンは独りごちる。これで女中がいれば申し分ない。梶谷が「fun fun(楽しい)」と意味深にあおる。

「デモ ワタシ ニンキ ナイ」

 女中の来手がないのだ。

 横浜や神戸と違って、松江で洋妾はなかなかみつからないのではないかと梶谷は言う。

 横浜や神戸には外国人の来航が多く、洋妾という概念も当たり前になっている? 長崎などもそうではないだろうか。オペラの『蝶々夫人』は明治の長崎で、没落士族の娘にして、芸者の蝶々さんが、アメリカ海軍士官ピンカートンの洋妾(現地妻)になる。やがてピンカートンは帰国。蝶々さんは彼の帰りを待ち続けるというフィクションだ。あくまでフィクションだが、当時、現地妻は少なくなく、創作の参考になっていただろうと言われている。