『ばけばけ』第32回より 写真提供:NHK
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第32回(2025年11月11日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
トキ、女中第1日目
しじみ汁をながめるトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)。食欲がなく、残してしまう。
はじめての仕事だから胸が詰まって、と言い訳する。何事もないように笑いながら、夜は遅くなると断っておく。元気なふりして無理に笑顔を見せて家を出て、橋を渡る。
橋のたもとと重苦しい気持ちを抱えて、ふう、と深く息をする。すると花田旅館からウメ(野内まる)の声が聞こえてきた。
場面変わって、トキは花田旅館に。花田夫婦(生瀬勝久、池谷のぶえ)とウメが心配そうにトキを見つめている。トキが心配なので、できるだけ餌食にならないようにウメが最大限、そばにいることにすると申し出てくれた。花田夫妻、いい人たちである。
「あの男はとにかく扱いが難しいけん」と平太(生瀬)。
だから彼の扱いに慣れたウメがいるのも理にかなっていると考えたようだ。
おかげでちょっと気が楽になったトキ。声も表情もワントーン上がる。
実は……と何か言おうとしたとき、司之介(岡部たかし)がやって来た。トキはへんな踊りをしてごまかす。家族には女中のことは秘密なのだ。
「二日酔いですが」「こちらこそ板の間」
平太が言葉遊び。そしてまたへんな踊りを続けるトキ。ツヤは「朝稽古せんとね」と第10回に出てきた相撲の柱を押す「鉄砲」をやりはじめる。トコトントントコトントン♪ こうして司之介をけむに巻く。
それから打って変わってメロウな主題歌が流れて、タイトルバック明けはヘブンの家。
「朝餉(あさげ)をお持ちしました」と敷居をまたぐトキ。この敷居という名の結界を超えたら、そこは異界のようなもの。中は朝だというのに、やけにうすぐらい。







